伊藤探偵事務所の混乱 50

二人は、黙々と準備を始める。
驚くべきことなのか、ここまで予想されていたのか準備はあっという間に終わった。
arieさんに言わせると、食えない老人だそうです。
完全に梱包された食料。
念入りに、2重のタンクに入れられた水を積んだ車。
一応の武器弾薬。
erieriさん:「あとは、着ていくドレスを選ぶだけね」
西下さん:「皆さん聞こえますか?」
改めてみんなに通信機が渡され、各自での通信が可能になった。
テストで西下さんが話をしている。
西下さん:「ドレスの色は決まりましたか?」
arieさん:「これからよ」
erieriさん:「口煩い男は嫌われるわよ」
西下さん:「arieさんが二人に増えたようですね」
arieさん、erieriさん:「一緒にするな!!」
KAWAさん:「お姉さんたち いっそいっそ」
所長:「まあまあ、両手に花ということで・・・」
二人の間に割り入り、両方の手を二人の肩に掛けた。
arieさん、erieriさん:「気安く触るんじゃない!」
肩を引いた二人は、抜いた肘で所長を地面にめり込ませた。
所長は かえるが地面に押し付けられたような格好で倒れている。
arieさん:「KAWAちゃん、お姉さまって言わない!!」
両手を上に上げて、熊のようなポーズでKAWAさんを威嚇するarieさん。
KAWAさん:「もばちゃん、こわ〜い」
僕の後ろに隠れた。
erieriさん:「せめて、盾にぐらいなる男を選びなさい」
KAWAさん:「べ〜〜〜〜」
KAWAさんが僕の影から、erieriさんに舌を出しながら言った。
erieriさん:「このがき!!」
西下さん:「楽しそうでいいんですが、そろそろいいですか?」
所長:「何かあったかね?」
いつの間にか立ち直った所長が、真顔で答える。
西下さん:「もう30分もすれば楽しい時間が終わりそうなんですが」
所長:「アラブのお客さんかね?」
西下さん:「そのようですね、周りも包囲されたようですね」
「老さん達は大丈夫なんですか?」
arieさん:「もうとっくに誰もいないわよ、それより “手っ”」
所長の手がarieさんのお尻をなでていた。
その手を掴んで、arieさんが所長をerieriさんのほうに投げつけた。
erieriさん:「あたしも要らない!!」
避けたのでやはり所長は地面に激突した。
arieさん:「正確にはどれぐらい?」
西下さん:「27分って所ですか?」
arieさん:「周りの敵はどれぐらい?」
西下さん:「200って所ですか」
シェンさん:「200ぐらいなら、楽勝ね!」
arieさん:「駄目よ、爆発に乗じて逃げるわよ」
シェンさん:「どうして、敵は倒しといたほうが数が減るよ」
所長:「200もいるなら一般兵士だろうから、殺すには及ばない。下手にすると窮鼠猫を噛むからな。」
シェンさん:「万が一にも無いメンバーだと思うんですが?」
arieさん:「所詮サラリーマンは怖くないのよ。怖いのは死ぬことを恐れない馬鹿と、殺すことを趣味にしている馬鹿よ」
所長:「皆殺しにしたら、馬鹿が増えるでしょ」
KAWAさん:「じゃあ、どうやって脱出するの?」
erieriさん:「そこよそれ、どうするつもり?」
所長:「やはり、知恵と勇気でしょう」
arieさん:「知恵と勇気で何とかなるなら、警察はいらないわよ」
西下さん:「それかもしれません」
「どれですか?」
西下さん:「そこの奥の部屋の絵」
シェンさん:「たしかに、知恵と勇気と書いてあります」
所長:「と言うわけでぬりかべ君」
さっき用意した武器で、壁の絵を殴り倒した。
割れた絵の裏には扉があった。
erieriさん:「当たり前すぎて面白くないわね」
KAWAさん:「つまんない〜」
所長:「面白くなるのはこれからさ」
所長の目が妖しく輝き楽しそうに笑い始めた。
erieriさん:「来ちゃったみたいね・・・・・」