伊藤探偵事務所の混乱 72

二人が踏み出した影から、何かが飛び上がってきた。
人のようにも見えたが、人にしては小さく感じた。
そして、何か着ているのかシルエットんにたなびくものが見えた。
勿論、びっくり箱やお化け屋敷ではないので ただ出てきて脅かすわけではなく刃物のようなもので二人の喉めがけて突き出した。
何の心配もしていないが、二人は綺麗に体をそらして避けた。
避けられた後も、体制を崩さず 改めて洞窟の影の部分に溶けていった。
arieさん:「ジュラシックパークの後は、狼男のようね」
erieriさん:「次は、ミイラ男か コウモリが飛んでくるんじゃない」
arieさん:「そう、金色のコウモリがミイラ男の棺の上に乗るのよね」
違う違う・・・・いくつなんだ arieさんは・・・
闇の中から再び影が上がった。
狼男だから、こちらの言ったことを理解して怒ったのか、それとも野性の本能で女性が弱いと思い込んだのか 改めて二人に襲い掛かった。
今回は、野生の感も役に立たなかったようだ。
aireさんたちの後ろから飛び掛った。
飛び上がった瞬間、空中でその姿を僕の目が捉えた。
小さく見えたのは、手と足を必ず地面につけて動く姿がそう思わせたのであろう。実際はそんなに小さくなく逆に肩越しの盛り上がった筋肉はヒト科の生物とは思えないほど盛り上がっていた。
もちろん、普段四足で歩いているなら当然かもしれない。
空中に舞い上がってからも、比較的体の自由がとれるらしく胸の前になおしていた手を伸ばすだけで空中で体を回転させ地面に対して横を向いたまま飛び掛ってゆく。
2匹(人)がお互い、arieさんと、erieriさんの方を向きその長い爪を突き出した。
ここだけは、動物では考えられない攻撃である。
獣の前足は、爪を引っかくように使い攻撃する。
しかし、この狼男たちは爪を突き出すように攻撃をしてくる。やはりヒト科の生物のようである。
断っておくが、そこまで詳細に見えたのは 僕の目が良くなったわけではなく空中で動けなくなった狼男を見たら横向きで、腕を突き出していたのでそういう攻撃をした事が解った。
勿論、大人しく攻撃を受ける二人ではないので、一人今言ったように空中に浮かび、もう一人はどういうことが起きたのか僕の目が確認できなかったが、地面に這いつくばってarieさんの足の下に潰れていた。
僕とぬりかべさんの間からも影が飛んだ。
僕たちには目もくれず、arieさん達の所に飛んだ。
避けたarieさんの足から、もう一匹が逃げた。
そして、逃れた2匹がerieriさんに体当たりをした。
飛び掛ってきた一体は避けたものの、足元から立ち上がりざまに飛び掛った狼男の体当たりは体を廻して避けたが避け切れなかった。
回転する方向に当たられたので、体を過剰に廻し膝を付いた。
空中で動きを止められていた、狼男はそのまま地上に落下して、そのまま又闇に消えた。
取り合えず、3体はいるようだ。
「erieriさん、大丈夫ですか?」
erieriさん:「何ていったの?」
どすの利いた声が響いた。
「あっ、あっのー 大丈夫ですか?」
erieriさん:「誰に大丈夫って聞いているの?」
arieさんは、空を見上げて手の甲を額に当てた。
ぬりかべさんは僕の傍を、首を左右に振りながら離れていった。
僕は、みんなの間で一人取り残された。
周りから、唸るような声が場所を悟らせないようにあちこちで声を出す。
ゆっくりerieriさんが僕に近づいてくる。
erieriさん:「だ〜れが 大丈夫だって? え〜っ」
まるで、田舎のヤンキーのように首を微妙に右にかしげながら、表情を変えずに近づいてくる。
arieさんに慣れてなければ、意味も解らず取り合えず謝っていただろう。
もう、arieさんで慣れているので、ここで謝れば力任せの拳が飛んでくる事も学習したので取り合えず謝らずに頑張った。
小鹿のようなかわいい目で助けを求めたが、二人とも別人の顔をしていた。
ここで、役に立つのは今までの経験、arieさんに逆らっていた人は・・・・
頭の中には所長しか思い浮かばずに、所長のことを考える。
僕は所長だ、僕は所長だ。
この場で、所長ならどうする・・・・
「男に人気がありするってのも大変だな〜って」
所長のように、場面や感情を考えない、つまらない軽口をいってみた。
言ってみて気が付いた。所長がこの後どうなったかも。
叫び声を上げて、飛び掛ってきた狼男。
僕を殴るはずだった拳が狼男に当たり、僕の顔の脇を飛び越えて壁まで飛んでいった。