伊藤探偵事務所の爆発5

「大丈夫ですか?」
血を吹いて倒れる男に駆け寄った。
arieさん:「ばかっ! やめろ」
肩にナイフの刺さった男が起き上がって、型からナイフを抜いて飛び掛ってきた。
erieriさん:「ちっ!」
erieriさんはこちらに向かって大きく腕を振った。
彼女の指先からは、細い鋼線が僕に向かってきた男に伸びた。
男の動きが止まった。
男:「どりゃ〜」
両サイドに走り出した男のうち、二人がerieriさんにむかって飛びかかった。
残りはarieさんに向かって。
勿論、どちらが勝つかなんて考えるまでもない。
しかし、その瞬間に止まった筈の僕に向かってくる男が体の自由を取り戻した。
ぼくは その男に突きこまれたナイフを 避けた。
避けたといえばカッコがいいが、ただ、あまりの突然な事に体が反応せず、恐怖心で腰が引けてそのままバランスを崩して座り込んだだけであった。
男は避けられてバランスを崩して、尚且つ怪我で踏み込みが効かないのかそのまま僕のほうに倒れこんできた。
乗りかかられた記憶はあったが、その衝撃で改めて頭を地面に力強くぶつけたようで意識がそこからなくなってしまった。
気が付けばホテルの一室だった。
後頭部が重いのは頭を打ったからだと解るのに、しばらく時間がかかった。
頭の回線が繋がるのに時間がかかったのと、記憶の糸を紡ぎなおすのにも時間がかかってしまった。
「ここは・・・」
声に出すほどでもなく、口の中で呟いた。
どこからとも無く声が聞こえる。
「おはよう」
女性の声である。
女:「始めまして お加減はいかがですか?」
「頭が痛い事以外は悪くないです」
人との会話で、一気に頭の中が覚醒した。
自分の手足の状態を確認する。
手、は流石に自由ではないようだ 痛いほどではないが両方の手が別々に括られている。
気づかれないように、数センチ程度動かしてみたがその範囲では自由はあるようだった。
ただ、どこまで自由なのかは解らない。
足は、足には何もついていないようだった。
他に、体の中で変わった部分は無いようだ。服もそのまま着ている。
自分の体には、上から布団のようなものがかけてあるので黙示では確認できなかった。
女:「か弱い女性では殿方には敵いませんので、申し訳ありませんが少し 小細工させて頂いております。」
こちらの動きを見透かされているようだ。
本当に女性だからか弱いかどうかはともかくとして、丁寧な言葉遣いの女性である。
まあ、比較対照の女性が あまり丁寧な方々がいないのでそう思うのかもしれませんが。
それにしても、こういう状況に慣れてゆくのもどうかと思うが体がそういう風に反応する。
とりあえず、自分の体の状況を確認する必要があった。
「起き上がらせてもらっても良いですか?」
女:「これは失礼いたしました。手をお貸ししましょうか?」
「いえ、一人で起きられると思います。」
どういう風に、縛られているか解らないので実は一人で起き上がれるか自信は無かった。
右手を動かして、ベットに付けようとしたら 左手がついてきた。30cmぐらいの感覚で繋がれているようだ。
体を起こすのに、不自由はしなかった。
そして、ベットサイドに足を出して座った。
女:「何かお飲み物でもいかがですか?」
自分の足には予想通り何もつけられていなかった。
唯一、襲われた時とちがうことは靴が脱がされていた事である。
視線が変わって部屋がもう少し広く見渡せるようになったが やはり、普通のホテルのようだった。
小さなテーブルとソファーのある、ダブルベットが置いてある比較的広めの部屋です。
「もし、可能であれば コーヒーを」
喉が渇いていたかどうかは別にして、取りにいっている間もう少し詳しく部屋の中が見られるかもしれないと思ったからである。
女:「あっ、もしご入用でしたら なんでも手配しますのでおっしゃって下さいね」
「何でもですか?」
かちゃかちゃと音を立てて、奥でコーヒーを入れている。
カメラかなんかで監視されているかもしれないが、こちらから完全に見えない位置に居る。
あまり、敵視されているわけではないようである。
女:「武器以外で宜しければ、何でもお探しできると思います。」
コーヒーの香りが、奥から香ってきた。