伊藤探偵事務所の爆発26

「あまり気にしないでください、慣れていますから」
未来さん:「慣れて、ですか?」
「そう、慣れたくも無いのですがね、私のところにも悪い冗談の好きな人達が多くて、いつも騙されるんです。」
未来さん:「でも、」
「今回なんか、命がかかって無いだけましって 思いますよ。ほんとう!」
未来さん:「そういっていただけると・・・」
「それに・・・・未来さんは知らなかったんでしょ?」
未来さん:「も、勿論」
「じゃあいいですよ、あの人達が酷いのにも慣れていますから」
そういいながら、僕は機能買った靴の箱を開けてみた。
実は、昨日僕が買ってあげた筈なのだが、色も形も覚えてなかったからで、すこし、未来さんが選んだ靴にも興味があった。
「どれがお気に入りですか?」
酔っていたのか、目の覚めるような青い靴 とても僕が一緒に選んだとは思えない。
もう一つは、黒いスエードの靴。そして、濃い緑のストラップがロープのように編まれた靴。
未来さん:「青い靴です」
そのまま、その靴を履いて見せてくれた。
色白の未来さんは、青い靴を履くことで 余計白く見えた。
病的なまでに白い色だったが白い服には溶けるように見えた。
そして、体全体で見たときには 青い靴がアクセントになって、そこにいる存在を主張する。
「似合いますね、一層美しく見えます」
未来さん:「そんな、先ほどの方のほうがもっとお美しい」
「でも、悪意のある冗談が得意ですけどね」
未来さん:「そんな風にはとても」
「見た目に騙されるんです、みんな でも、良く解ったでしょ あの喋り方」
未来さん:「そうでした、お引き受けいただけませんのね・・・」
「今は誰も見ていませんか?」
未来さん:「多分・・」
「恐らく引き受けるつもりです。」
未来さん:「じゃあどうして?」
「何か、時を待っているか 条件が気に入らないんでしょう」
未来さん:「そうですか」
何か,嬉しそうに答えた。
「多分、あの所長だか局長だかが気に入らなかったんじゃない?」
未来さん:「そうなんです、しつこくて嘘つきで・・」
言い過ぎたと言いたげに、両手で口を押さえた。
「やっぱりそんな人だったんですね。arieさんが過敏に反応していましたから」
未来さんは、声を殺して笑っている。
「あの所長の首と引き換えならarieさんも引き受けたかもしれないのに」
頑張って声を殺していたが耐え切れずに声を出して笑い始めた。
未来さん:「じゃあ、きっとお引き受けくださいますのね」
「はい、多分間違いないと思います」
“ぷるるる”
僕の携帯電話が鳴った。
arieさん:「いいアイデアね」
「何がですか?」
arieさん:「あの局長の 首よ」
「・・・・」
arieさん:「未来ちゃんに変わって」
「未来さん、そちらは盗聴してなかったかもしれませんが こちらは盗聴してたようです。電話に変わってくれって」
未来さん:「先ほどは失礼致しました」
未来さん:「いえ、はい そういわれましても一存で」
未来さん:「はい伝えさせていただきます。しかし、まさか・・」
未来さん:「わかりました、そのように」
電話を僕に返してくれた。
「arieさん、何ですか?」
arieさん:「性悪女って言われたから言いたくない」
「そんな事言っていませんよ」
arieさん:「そんな事より、事情が変わったの 替え玉になることは変わらない。しかし、全力であんたなんかを守らなきゃ成らなくなるみたい。でも、悪意のある冗談が得意なんで 手を抜いたらごめんね」
「しゃれにならない冗談は止めてください」
arieさん:「しゃれにならないから、悪意のある冗談なのよ 学校で教わってこなかった? じゃあね」
一方的に切ってしまった。
「全く、性格悪いんだから・・・・」
あっ、 慌てて口を押さえた。もちろん、今も聞かれているんだ。
未来さん:「本部に連絡してきます」
「なんて?」
電話の内容を知らされてない僕は未来さんに聞いた。
未来さん:「お引き受けくださるって!」
「良かったですね」
未来さん:「ええ、でも条件次第で こちらの条件が合うかどうか」
「大丈夫です、その辺は引き受けられないような条件を出す人じゃないですから」
未来さん:「でも、冗談だった局長の首ですよ・・・」
「きっと既に、辞令が出ています。そういう事には抜かりない人です。」
未来さん:「では、行って来ます」
未来さんは部屋に走っていってしまった。
「おーい、逃げちゃうぞ」
小声で冗談交じりに言ってみたが、返事をする人がいなかった。
僕は慌てて、走った。
もうすぐ生理現象の我慢の限界だ。
“ぷるる”
携帯が又鳴った
「はい、あっarieさん まだ何か?」
arieさん:「いえ、走ったので悪意のある嫌がらせよ」
そのまま、“ぷつっ”と電話を切ってしまった。
慌てて、そのままトイレに駆け込んだ。
「arieさんの意地悪〜」
トイレから、部屋に聞こえるように大きな声で言った。