Miss Lは、ローズバスが大好き 10

持てるだけの荷物を持って、職場に避難した。
「あの、先生・・・」
Mr.G:「事情は既に聞いております。取り合えず ここの部屋におられてはどうですか?」
「よければそうさせていただきます。」
まるで、こちらの言う事を予測していたかのように 会話が終了した。
警察のあの二人が、Mr.Gがいかに良く知っているかが伺われる。というよりも 良く知りすぎている?
私の就職の問い合わせの件も、誰にかかるか解らない110番で確認できるぐらいだからよほどの関係があるのか? あの警察官がそれほどえらい警察官なのか? それなら現場に出てきたりはしないだろうし・・・・
謎が深まる。
それどころか、昨日の夜遅くまで結局仕事も無いままここに残らせたのはMr.Gなのだから こうなる事を予測していた?
「あの、先生」
Mr.G:「はいなんでしょう?」
言いかけたけど、よくよく考えてみたらそうだとしてもMr.Gのせいとは思えない。模しそうだったら私の住むところを提供する義務なんて無いはずだし。大体、当っていたからってどうする事も出来ないし 外れていて追い出されても困ってしまう。
「いえ、お茶でも入れましょうか?」
Mr.G:「今は仕事の時間ではないですし、ゆっくりしてください。」
あまり、気になっていないようではあるし あまり考えてもいないらしい。
「色々な事があって、混乱しているので そうさせていただきます。」
Mr.G:「あっ、Miss L」
「はい、なんでしょう?」
なんかしばらくぶりにMiss.Lと呼ばれた気がする。他人行儀というか 距離を取られたような気がしたが そこまでの仲になるほどの付き合いというわけでもない。というよりも そんな付き合いになろう事も将来的には考えられないけれども 何故か妙な距離感の変化だけは感じられた。
Mr.G:「生活に必要なもので不足するものがあれば 何でも遠慮なく言ってください。こちらで用意しますので。あっ、勿論お困りでしょうから」
恐らくお世辞や言葉だけでなく、ちゃんとしてくれるつもりのある言葉だろう事は想像がついた。そういう人だと言う事もなんとなく今までのことで解っていた。
「ありがとうございます、お言葉に甘えて あればお願いします。」
自分の財布ひとつだけ持って出かけていたので、頼る以外に方法も無いし 大体、最初からやばい状態だったからこそ こんな怪しいと思ったところに勤めてるんじゃない!!
そうする以外にない事は火を見るより明らかだった。
自分のそう言った計算高い所に自己嫌悪した。
自己嫌悪した頭を引きずったまま、部屋に入った。他にする事も無いし朝起きたばかりだったけどベッドに倒れこんだ。
喉が乾いている事に気が付いて、冷蔵庫を開けたら紙パックに入ったオレンジジュースが。
まさか、Mr.Gが買いに行ったとは思えないが 誰かに届けさせて用意してくれていたんでしょう。日付が新しかった。
そういえば、部屋の鍵は私が持っているはずなのに・・・・
そのまま気が付いたら眠りに入っていったようです。

「小柳刑事、やはり というよりも絶対ありえない状況ですよね」
若い刑事が、頭を捻っている。
小柳刑事:「いや、極めてわかりやすい事件だ。」
「どういう意味ですか? これをどこの誰が説明できるって言うんですか?」
若さゆえだろうか、馬鹿にされたと思ったのか声を荒げる男
小柳刑事:「ガス爆発 って事だ」
「ガス爆発ですか? ガス爆発って言うのはこういうのじゃなくって もっと放射状に爆発域の広がる跡に んっ」
小柳刑事といわれた、男が若い男の口をその大きな手で塞いだ。
メガネをかけている男のメガネから下は全て隠れてしまい、その上力を入れて塞いだので男の首が伸びるだけ伸びていて 伸びきれない部分は、その男が爪先立ちになる事で支えていた。
小柳刑事:「これはガス爆発だ!」
怒鳴りつけるように言った。
そして、腕を乱暴に引き寄せ引きずられるように男の顔がすぐそばまで寄せられた。
小柳刑事:「例え真実がどうだとしても、宇宙人か怪物がやってきて安アパートの上だけを薙ぎ倒していったって 誰にどう説明するつもりだ?」
「もごもごもご」
若い男は何か言っているが、話を聞くつもりは無いようだ。勿論、腕を離すつもりも無いようだったので喋る事すら出来ないのではあったが。
息が上がったころに手を離したら、若い男はそのまま地面に座り込んでしまった。
その間にも、小柳刑事はてきぱきと現場の指揮をとっている。
若い男がようやく立ち上がれるようになったころには、コートの襟を立て直して車に向かって歩き出していた。
小柳刑事:「帰るぞ! 今晩はおごってやるから 飲みに行こう!」
後から追いついてきた若い男の肩をたたきながら言った。