“ばん！”
扉はそっと閉める事って子供のころに教えられた。その当時は行儀作法の一環として。
勿論、警官が行儀作法の手本にならないのもどうかと思うが、それ以上に 叩きつけるように閉められたドアの窓ガラスには二すじの亀裂が走り ドアの取っては開いた形のまま元に戻らなくなっている。
最近の流行では、地球環境にも優しくするために静かに閉めなさいと教わるほどの状況である。
しかし、誰も彼にそれを注意する人はいなかった。現代人が無関心になったからではなく 動物としての本能からだれも言い出せなかっただけなのである。
それでも、正義は彼にあると彼自身は思っている。所詮正義なんてその罪の大小の相対的な評価でしかないと言う事である。
彼の怒りは、彼の置かれた待遇に対してではなく 今回の捜査で与えられるチャンスが丁度事件の回数分 ３回のチャンスの予算しか与えられなかった事である。
勿論、彼が納得して出てきたわけではない。「予算があろうが勝手に出動します」と怒鳴って出てきたは良いがそう何度も失敗が続けばそれすらも難しくなるからである。
出現する場所の予測の一つも予想できない今、期限を切られれば追いつづけられないかもしれないというのが一番の悩みである。
勿論、相手を逃がすつもりも捜査に手を抜くつもりも無いが 捕まらなかったらと思うと悩みが多い。
悩んでみても始まらない、とりあえず事件が起きるのを待つしかないという状況だった。
Ｐｒｅｔｔｙ Ｗｏｍａｎ張りのお買い物なんて、生まれてこの方した事が無い。勿論で前ぐらいはとった事があるが目の前に買う物を並べてもらって買うなんて経験はあり得ない。
勧められたものを買う甲斐性なんて無いけど、わざわざここで勧められた物を断れるほど強くない。
困っているところにＭｒ．Ｇのご入場。
Ｍｒ．Ｇ：「とりあえず彼女が気に入ったものを上から１０個ほどかまわないから持ってきて。着なくてもそれはいいから」
選ぶ前に言われても困ったけど、ある程度見た後にそう言われれば勝手に相手が選んでおいていってくれる。問題なのは、私が欲しいのは普段着だったのに持ってくるものが魅力的なものばかりで目移りして結局選んだ商品の中には 普段着に着れそうな服が無い。
やはり、みんなが帰ってから通販のカタログを繰りなおそう。
でも、傍目に解るこの顔の崩れ方 にやけ方はあまり人が見ていい物ではないでしょう。
とにかく、タンスの肥やしはなんとやら あるだけで ただそれだけで気持ちが安定する。
ひとしきりみんなが帰ったところで、そのままベッドに寝転がった。
魔族に属すると思われるような変な怪物。それが人の作ったものだと言う思い切った考え方には驚かされた。
ただ、現実にいる事は望まずもがな体感してしまった。そして、Ｍｒ．Ｇを狙っているお陰で巻き込まれていったようだ。
今外に出れば狙われる事は間違いない。そして、今日の刑事たちの様子ですから捕まりそうに無い。永久にここから出られないのかもしれない。
Ｍｒ．Ｇの立場と言うものは良く解らないが、全部を話したがらないのは正確が悪いからだろうか、それとも、推測のレベルで確率が下がっていくの話しきれないからかのどちらかでしょう。
私との会話の感じから行くと、前者のような気がする。
あっ、笑っちゃ駄目だと思うけど 笑ってしまう。
気の毒な刑事たちだと思いますが、小柳刑事はともかく七瀬刑事は自業自得な気がする。
しかし、この事件は既に一般的な人の理解を超えているので 普通の常識で考えればあの対応は仕方ないのかもしれない。
でも、冷静にこんな話に聞き入る刑事がいたらそちらのほうが怖い。
Ｍｒ．Ｇの持って回ったような言い回しはそのせいかもしれない．その話し振りに怒って話を聞かないような人には話が出来ないと言う意味なのかもしれない。
しかし、始めてきてあの話方だったら大概怒って帰ってしまうような気がしなくも無いが。
とにかく、今は何かが起こるのを待つしかないという状況は変わらない。
今のところ、長時間の行動が出来ないだろうという予測の元に話が進んでいる。しかし、そこまでの話から あまりにも一般的な車を使った逃走手段やなにかを使っていると結論付けたのは すこし浅はかだったかもしれない。
ゆえにそこまで言うつもりは無かったのに、話を先に勧めてしまって悪い事を下かもしれない。
あの刑事たちは見当違いの方向を探しているのかもしれない。
それに、昨日の夜の雷があれだけ鳴っていた事を思うと、恐らく何匹もの怪物がやってきたのではないかと思う。
もし、車できているとすれば 昨日の夜も来ていた筈だろう。
表には監視がいると考えて間違いが無いのであれば、今日も襲ってきても不思議じゃない。
そうであれば、ここに網を張ればそれだけで繰る確率がぐっと上がりそうな気がする。
じゃあ、何故ここで待ち伏せるように言わなかったんだろうか？
Ｍｒ．Ｇの推理には未だ謎がある。
このまま表に出て行って問いただしても良いが、なんとなくそれはスマートではないような気がする。
どうせ、表に出られないのであればしばらくこのゲームを楽しみましょう。
