Miss Lは、ローズバスが大好き 26

あのケーキは食べられるんだろうか、やっぱり買いなおしたほうが良かったんだろうか?
だが、これ以上無駄な時間は1分もかけたくなかった。
又買いなおせばいいだろう。それよりも。
 
“ぴんぽ〜ん”
「は〜い」
誰かしら?Nr.Gの予想が外れて小柳刑事が来なかったのは遅れていまきたんだろうか?
インターホンのカメラにはシルエットしか写らない大きな体。それ故に小柳刑事と言う事が良く解る。
「いらっしゃいませ」
小柳刑事:「あっ、すいません」
やっぱり小柳刑事だった。上から玄関のドアを開けるボタンを押すとと、中に入ってくる。
小走りに、台所のカウンターに走りポットに火を入れる。温めなおすにはコーヒーは時間が立ちすぎている。部屋の中にコーヒーの香りが篭っているから出来たら違うものが良いかしら?
でも、駄目ね 匂いに負けてしまう。
筒になったコーヒー豆の入れ物の蓋を開ける。
“ぽん”と気持ちのいい音を立てて入れ物の蓋が開く。
昨日念入りに、大きさをそろえたコーヒー豆は 茶筒のふた一杯に広げると丁度二杯分のコーヒーになる。
Mr.Gは、長々とコーヒーを飲むのが趣味らしいからそのままで私もご相伴に預かりましょう。
コーヒーミルに、豆を入れてスイッチを入れる。
そして、その足で玄関のほうに 今ごろエレベーターがこの階に付く。
“ポォン”という到着音がドアの外からする。
ドアの前で待ち受ける。
「いらっしゃいませ」
頭を下げて、大きく深くお辞儀をする。
ゆっくり顔を上げて相手の姿を見る。大きな体なのでなかなか顔までたどり着かない。たどり着く時には最高の笑顔を演出・・・・
「ど、どうしたんですか?」
だらんと下げられた左手には、大げさに 手の大きさが倍になろうかと言うぐらい大きく包帯が巻いてある。
よく見ると、右手にも肘の辺りから手首の辺りまでびっちりと巻かれているのだろう ただでさえ太い腕だが そういうのではなく妙な盛り上がりが服の下にある。そして袖からは白い包帯が見えている。
それ以外には、冗談で貼られているかのように 顔にぺたぺたと縦横無尽に張られた傷テープ。そのテープにも収まりきらない大きな引っかき傷。というより擦り傷??
大きすぎる面積からどういう怪我をしたのかは想像できないが痛そうな事だけは確かだ。
「どうしたんですか?」
恐らく傷で顔中の皮膚が引っ張られて表情が解りにくいが、どうも笑っているらしい。
無事な右手には ケーキの包みが握られている。
小柳刑事:「あの・・・どうぞ、Mr.Gはいらっしゃいますか?」
ケーキの包みを手渡されたが、そのまま動けなかった。あまりにもひどい怪我にあっけに取られた。
小柳刑事:「Miss.L どうかされました?」
顔を下げてきた小柳刑事。
「きゃっ!」
顔を近づけられて、驚いた。もうそんな年ではないが
思わず、ケーキを地面に落としてしまった。
「すいません、せっかく頂いたのに・・・ ぐちゃぐちゃになってしまったかも・・」
小柳刑事:「いえ、恐らくそれより前にぐちゃぐちゃになっていたと思いますから。大丈夫。いや、決してぐちゃぐちゃのものを持ってきたつもりではなく 途中で事件がおきて それで・・・」
慌てて取り繕う小柳刑事。
Mr.G:「その傷はあの怪物によるものですか?」
いつの間にか、後に珍しく歩いてMr.Gが歩み寄っていた。
小柳刑事:「実はそうなんです。それで、Mr.Gの意見をお伺いしようと思って」
どっちでもいいが、一人は背が高く体が大きく、一人は無用に横が大きくどちらも明らかに私のサイズを超える二人が私をはさんで話をしている。
うっとしいったらありゃしない。
「とりあえず 椅子にお座りください。お茶を用意しますわ。もしかしたら食べれるケーキも有るかもしれませんし・・・」
Mr.Gはゆっくり いつもの定位置 ソファーに座り込んだ。
小柳刑事も、いつもの自分の定位置 Mr.Gに一番近い窓際の椅子に腰掛けた。
コーヒーのミルはもう止まっていた。
コーヒー豆からはぷんといい匂い。
もう、ミルで熱くなった豆の温度も下がるぐらいの時間が立ってる。
「うん、いい感じ」
暖かいお湯で、器具を温め始めた。