Miss Lは、ローズバスが大好き 31

ボトルが横倒しになっている。
いつの間にか、飲み尽くしたみたいだ。
小柳刑事は、既に椅子の上で大きな口を空けて背中がまるで椅子を隠してしまうようにもたれて倒れこんでいる。口はだらしなく開いたままで、涎も垂れている。
お酒に弱いわけでは無さそうだ、今でもほっぺたすら赤くなってない。だからと言って、青白く顔色が悪いわけでもない。と言うより日に焼けた顔は健康そのものである。きっとだけど、ただ疲れて寝ているだけのようだ。
ウーダン:「おいといてくれてもいいですよ、入り口に置いとくと魔よけにはぐらいなりそうだから」
「お願いしますね、私もつれて帰れるほど力持ちじゃないから」
ウーダン:「また、ご冗談を」
「あ〜ら、見てのとおりの細腕ですから。」
腕をまくって、腕をみせた。自慢じゃあないけど細い腕である。
ウーダン:「Mr.Gから聞いていたのとは違いますね その腕では信じられないですからね」
「Mr.Gは何を言っていたんですか!」
ウーダン:「いや、特別何かと言う事は聞いてなくて」
「じゃあ、どういうことですか?」
ウーダン:「時と場合によってはお強いと言う噂を聞いたような聞かなかったような・・」
「そんな〜見たとおりです」
とりあえず、年甲斐も無くできるだけ可愛く答えた。
それより、Mr.Gはどこまで調べたんだろう。今度何かのチャンスの時に聞いておかないといけない。
ウーダン:「もう一本飲みますか? 桜田門につけときますよ」
「おしゃべりな、Mr.Gに一本目はつけといてください。そろそろおいとましないと帰れなくなりますから。」
ウーダン:「送らせますよ」
「ボディーガードが役に立たなくなったから、安全なうちに帰ります。」
ウーダン:「是非、又お越しください あなたなら何時でも歓迎いたします。」
「ありがとうございます。では、番犬のお世話お願いしますね」
立ち上がったら、実は足にびみょうにちからが入ってなくて、途中からテーブルに手をつきながら立ち上がった。
ウーダン:「大丈夫ですか?」
「はい、これぐらいでは化けないですから・・・」
そのまま、マンションに帰った。
帰り着いたマンションでは、既に電気が消えていた。
問い詰めようと思っていた、Mr.Gは椅子が向こうを向いていたから解らないけどきっと座ってそのまま寝ているのだろう。
もう、そのまま確認する事もせず、自分の与えられた部屋に帰った。
とりあえず、お茶をれるために用意してある水を飲んで、そのままベッドに倒れこんだ。お風呂に入る気も起きない。ここの唯一の欠点はお風呂が狭い事だった。
なんとなくむしゃくしゃしたので、この下の階2階にはまだ借り手が付いていないらしいので、窓を空けて夜中にはた迷惑だが 大声で叫んだ。
「広い風呂にはいりた〜い」
目一杯叫ぶと、ふっと気が抜けてそのまま眠りについた。
 
意識を取り戻したのは、刺さるような痛みが頭に走ったから。
「あいたたた」
起き上がろうと思うと、思ったけど結構苦労した。
とりあえず、シャワーだけを浴びて そのまま服を着替えて事務所に出た。
Mr.G:「おはようございます 昨日は楽しめましたか?」
こちらの気配をうかがっていたのか部屋に入った途端声をかけられた。
Mr.G:「お疲れでしょうから、もう少しゆっくりなさっていただいても結構ですよ。小柳刑事からも、朝の4時ごろお電話を頂きましたし」
きっと、突然目を覚まして 心配して電話をかけてくれたんだろう。とにかく、起きなくていいならもう少し前に言ってくれたらこんなに苦しまずに済んだんですけどね。
「いえ、もう大丈夫ですから。何かお茶でも入れますね」
頭痛の頭に堪えるけど目が覚めるから、今日もコーヒーにした。最近マンネリ気味だから何か対策が必要な気がする。でも、頭痛がするから明日からにしよう。
コーヒー豆を挽いている間に、思い出したのはウーダンから預かった本。
「Mr.G、これ預かってきました」
Mr.G:「ありがとうございます。お話はお聞きになりました?」
「はい、大変面白い話でしたわ。特に私がお強いとか言う話が一番面白かったような気がしますけどね」
Mr.G:「何かの聞き違いじゃないですか」
「そうですか、Mr.Gに聞いたと言ってらっしゃいましたけどね」
Mr.Gは何も言わずにくるんと椅子を回転させて向こうを向いてしまいました。
あまり、頭が回ってないので今日のところはこれ以上追及するのを止めた。
ようやく挽き終わった豆で、コーヒーを入れ始めた。
匂いが立ち上がりだすと、不思議に頭痛でざわざわした気持ちが落ち着き始める。
今日は、私にもわかる。きっとお昼前には小柳刑事がまたやってくるだろう。