言葉足らずと、嘘でない話

広告や宣伝の中には、嘘では無いが本当でもない事が良くあります。
一年ほど前によく話題になったのは W−Zero3の報道。
「Windowsの動く携帯電話。WordやExcelを搭載している。」
この内容に多くのこういった機器を今までも使い続けている人たちの間で
「誤解が生まれる」
と警鐘を鳴らしました。
これを信じて購入した人が、その運用でPCとは違うWindowsであったり WordであたりExcelであったりということに失望すると、せっかく育ちかけたPDA型の携帯電話(PHS)の将来に悪い影響を与えるからです。
でも、Windowsは確かにWindowsです。
「XP」と「CE(拡張版)」かの違いはあれどWindowsです。
WordもExcelも、前にPocketという言葉がついているかどうかはともかくそういったアプリケーションです。
嘘はついていないのです。
ただ、PCと違うウインドウズで アプリケーションは共用できずPCと同じアプリケーションを動かすことの出来ないことや、WordもExcelもサブセットなのでPCのファイルをそのまま開くことも出来ない場合もありますし、修正すると元の情報の多くが失われる可能性もあります(書式情報等)。
言ってはあげないと駄目なことを言ってないだけなのです。
 
でも、もしそれを記事の中に盛り込んだとしたらどうでしょう?
読み取る側にもそれを理解するスキルが必要となり、CPUの違いや OSの構造の違い等をどう理解させるかは大きな問題となります。
勿論、大前提として書く側にそれを噛み砕いて説明できるだけのスキルも必要となるということです。
技術誌ならともかく一般誌では紙面の関係からも圧縮されて表示されていないこともあるでしょう。
悪意があるのが、表現テクニックで(私もこの日記ではわざと使う事があるので大きなことは言えませんが)、悪意の無いのが言葉足らずということなのでしょう。
どちらも同罪です。
 
今日、自分のアンテナを見ていると
専用線と同等の安全性を公衆回線でも実現するVPN」という記事のタイトルだけがアンテナの中で目に付きました。
記事の内容はともかく、これだけを見るとVPNは夢の技術のように思われます。
専用線は、言葉通り専用線で たとえば家から会社まで引けば それは自分専用の回線ですので他の人が侵入することは回線を切断して直接電線でも繋がない限りは出来ません。
変わってVPNは多くはインターネットや複数の利用者のいる回線内で信号を暗号化することによりデータをやり取りする技術で、見かけ上は専用線のように直結して見えますがネットワーク機器の機能で成り立っている仮想回線です。
つまり、「黒」のインクがあって、それ以外の色のインクを全部混ぜると黒に近い色になるものの二つを比べてみるとやっぱり黒は黒一色のほうが綺麗だということに気が付くようなもので、物理的に分かれている回線と 暗号化によるソフトウエアーによる仮想回線では色と同じで限りなく近くはなっても、黒にはならないのです。
ただ、これは限りなく近づいたことを誇張的に言う手法としては悪くは無いでしょう。
純金を99.9%で言うのと同じでそこまでに近づいていればということです。
しかし、W−Zero3の例と同様に このキャッチにはわざとだと思われる書いていない事があります。
「安全性」の定義です。
一般的に回線の安全性は、データの漏れの事を言っているように思いますが、何よりも回線の安全性は必ず繋がっているということです。
サービスは対価に比例するというのは言葉通りで、専用線は高く、公衆回線は安価に出来ています。これは漏れの問題だけではなくそのサービスにも大きな差があるからなのです。
たとえば、VPNの通過経路がインターネットだった場合 インターネット自身が大きな障害で接続できなくなった場合はどうするのでしょう?
「そんなことは無い」
といわれますが、DNSの障害など日常茶飯事 当たり前のようにあります。
プロバイダーもいろいろな障害を毎日どこかで起こしています。
その回線上の問題であれば、その回線が復旧するまでVPNは繋がらないのです。
専用線はその高額なコストゆえに、障害時の復旧に関しても非常に高いサービスを提供してくれます。
その部分も含めての「安全性」が同等なのでしょうか?
実はあえて記事は読んでいません。
読んでしまうとおそらく文章の切り口がまた変わったことになってしまいますから。
広告であればこういった手法もありだと思うのですが、本文記事ではやはりちゃんと説明されていることを(文章中で)期待します。