お好み焼きって

あくまでも下町モード全開なので、実際に美味しいかどうかに関しては できればその道に詳しい人に語っていただけたら良いので 下町目線の話なのですが・・・
もともとは、今日のお昼に食べたお好み焼き(正確にはモダン焼き)が美味しかったので 未だ(晩御飯を食べて尚)尾を引いているわけなのです。
 
美味しいかどうかを語るのであれば、やはり焦げと言うのはB級に分類されます。
おこげご飯が美味しいと言ったところで ご飯全体で周りが焦げて香ばしさがご飯に移る事を至高のように言う美食家さんも 結局焦げた場所ではなく 白いところを食べているわけです。
かやくご飯の焦げたところが美味しいと言ったところで それこそ下手をすると行儀が悪いと一蹴されてしまいかねないのである。
以前に書いたこともありますが、たこ焼きにしてもそう。
もともとの成り立ちから言っても、「軽食」という位置づけであることからも座らずに食べられたりするように考えれば 今のようにソースに青のりやポン酢につけてればハナタレな子どもたちのオヤツには向かないのである。
私の住んでいるところが生粋の下町だったからかたこ焼きといえば何も漬けずに食べるものだったわけです。
流石にお好み焼きを立って歩きながら食べることはないのですが(子どもの頃に5銭焼きとか言って 今の100円焼き等は二つ折りにして新聞紙に挟んで食べましたがこれをお好み焼きとしないなら)必ず鉄板を必要とする食べ物でした。
小さな店では今考えれば恐ろしい話ですが、今のお好み焼き屋さんのテーブル一つ、いわゆる鉄板付きのテーブルで無理すれば6人ぐらい掛けられるのではと思われる程度のテーブル一つでお商売なさっていました。
半分は目の前で食べて、半分はお持ち帰りで お店派だった私は鉄板の前に座って食べているとお持ち帰りの人の頼んだイカ焼きのイカをこっそりお店のおばちゃんが私の方に飛ばしてくれたりしたわけです。
 
お好み焼きの美味しいところと言えば、大阪では「ゆかり」等の名前が上がるのですが(他意はありません。特徴としてわかりやすいので例に出しただけです 非常に上品な味ではあります。)そちらの生地をご存じの方ならわかるとおもうのですが かなり柔らかめの生地となっています。
出来上がりが柔らかく、美味しいと思うのですが下町流はこうではありません。
客の回転が命なわけです、何故なら前述通り鉄板はひとつしかないわけであるからです。
余談ではありますが、小判型のお好み焼きを焼く店もあるのですが、こちらは鉄板を沢山用意出来ないお店の工夫で、当時流行っていた洋食(特にハンバーグ用)の鉄板で出来た皿に乗せるために小判型に焼く必要があったのですが、この工夫により 鉄板のないテーブルの上にも熱いままのお好み焼きを提供できるようになったのは画期的発明です。
まあ、その発明も一般的でなかった(というか今のように情報が溢れてないし 下町のおばちゃんはそんなことにこだわって店舗拡張をかんがえなかったので)お店の事情で 回転率は大事だったわけです。
前述のような生地は焼きあげてゆく途中で壊れる可能性があるのであまり好まれなかったわけです。
大ぶりに切られたキャベツに小麦粉を溶いて作られた生地を入れて 油を引く代わりに当時は「肉」と言い張っていた豚のばら肉の薄切りを鉄板に広げて油も引かず(豚油で代用)一気に焼きあがるスタイルだったわけです。
鉄板も今のように全体が均等に焼けるものではなく、中に入っているのが実は普通のバーナーなので真ん中あたりが丸く熱が高くなる程度のもの。
火加減などなく、とにかくお客が来たら全開で焼く場所で火加減を調整した(端っこは思いのほか熱くない)程度。
そこで生地とキャベツを力任せに混ぜて、そのまま丸く広げるわけです。
一気に加熱されたキャベツから水が出て、それが膜になり直下での焦げを防ぐのですが僅かな間。水分の半分は小麦粉が吸い、半分は蒸発します。
 
今日のお好み焼き屋さんは入った瞬間、実はちょっとがっかり。
生地がどちらかというと神経質なぐらい細かく切られたキャベツに混ぜたどちらかというとかなりやわめの生地。
正直、下町お好み焼きとしては違うわけです。
この生地のお好みがまずいわけではないのです。これを形だけ真似したお店がまずいだけなのです。
そして、素人目にもわかる油が蒸発する勢いから非常に高い温度の鉄板である。
そこに3〜4mmはあろうかという厚めの豚肉を置く。一気に脂身が縮んでゆきます。
そしてその上に 一気に広げた生地は(ともあれ広げ方は小さめでぶ厚めでした)周りを白い湯気で見えなくさせる始末。
湯気からはキャベツの匂いが立ち上がります。
この匂いには期待が膨らむものの、この温度はフクザツな気分。
それにお店の人は広げた途端、そのまま行ってしまった。
よく見ると店主はひとりで廻しているのですが、テーブルは満席店内には15名ほどのお客さんがいます。
生ビールで半分の人が盛り上がって、次々と注文をするので一瞬足りともじっと出来ないわけですから そういった対応です。
 
じりじりとお好み焼きからは音がします。
水分が中で落ちては・・・、キャベツからは焦げる匂いもしてきた。
伊達に大阪の子はしていないので、自分で焼くお店にもよく行きます。返してみようかな・・・どうしようかな? と気をもませるほどに焼きすぎ感が。
通りすがりに鋭い目付きで店員さんがチラ見して通ってゆく。
ああ、手を出したら怒られそう(下手すると本当に怒られる店もあるので)。
ああ、もう我慢できない・・・と思った頃にそばを持って登場。
モダン焼きを頼んだので、茹で済みのそばを上に広げてひっくり返す。
次はそばから出る水分でまた湯気が上がって周りが白くなる。言葉通りで 冗談でなくまっすぐ正面を見ていても白く視界は曇ります。
部分的には焦げていますが 全然Okな感じ。期待感が広がるのは煎餅のように薄く焼けてゆくソバが気持ちイイ感じ。
ここまでの時間は本当にすぐです。かなり強火なので一気に焼き上げる形となっています。
 
この後は安心してみてられます。
隣のテーブルでも、「返しとこか(大阪弁でひっくり返そうか?)」とおばちゃんが言うのに対して 店主は「あと30秒はあかん」と優しく言った。
やはり勝手に返さなくて良かったんだ!!と、安堵した。
しばらく待って 一度だけ返してそしてソースとマヨネーズ(いらなかったかもしれない)をかけて出来上がりです。
で、食べてみたら本当に美味しかった。
とにかく甘いです。もちろん砂糖の甘さではありません。
キャベツの芯から出る甘さです。
おそらくキャベツの芯も細かく切って生地と混ぜられていたのでしょう。
両面はがっちり焼かれています。そして中は十分に水分を残しています。甘く感じるのがその証拠。
分厚い豚肉は十分にその役目を終えて全体に味を行き渡させています。
残った肉は 既にカリカリベーコン状態です。
ソバ無しで550円ですから、これ以上特別なものは入っていません。
ソースもオリジナルで作られているものですが、普段こんな濃いソースを掛けられたら嫌になるがソースに負けない生地の主張!!
おおよそ生地にも なんらかの出汁が混ぜられているようで 焦げたところも味が濃くなって主張しています。
 
ここしばらく・・・いつからでしょう?
スナックみたいなものですが、お腹を満たすためだけにソバを入れてモダン焼きにするものの全部を食べられないことも少なくなくなってしまった。
年をとって・・・・なんて思っていましたが 今日は違う。
「焼きそば追加頼んでもいいかな?」と聞きそうになるほど。
子どもはスペシャル焼きそば、奥さんはすじネギと みんな違うものを頼んだのですが どれも美味しい。
すじネギは醤油で味付け、焦げた場所は醤油の香りと書くだけで 唾をごくんと飲み込みたくなる気持ちもわかるでしょう。そして、焦げたネギの苦さは子供時代には食べたくないものの代表みたいなものでしたが 今は違うわけです。
久しぶりに・・・・食べました。美味しく。
 
自分の家の近くにこんな店がある幸福。
先代からやっているらしいこの店が家の直ぐ側にありながら気がつかなかった後悔。
店の繁盛も納得です。
もちろん、万人受けするかどうかは??です。
子どもの頃からなじんだ味だからこそ美味しいということもあるので、それでも興味があるのなら・・・ 今度一緒に行きましょうか!!