本物より本物らしい映像

「マスク」という映画を見たことがあるだろうか?
アメリカンコミックの映画化だったと思うのですが 実写とアニメの混合映画で、マスクをつけると人格も変わりスーパーマンに変る話で 勧善懲悪のスーパーヒーローではなく
マスクをかぶる前の 人格をベースとしてやりきれない思いなどを 何の遠慮もなくやってしまうようなお話です。
結果的にはそれがハッピーエンド(?!)を招く話なわけですが、バックスバニーなどを見ていてもそうなのですが アメコミと呼ばれるアメリカンコミックの手法がふんだんに使われていて面白いわけです。
例えば相手を叩き潰すときは「100t」とかって書かれたハンマーや重しを落としてつぶす。
大体は失敗して自分が潰れるわけですが、その時にはまるで缶ジュースの缶をプレス機でつぶしたかのように 縮んでしまいます。
思いっきり殴るときは 拳が人の倍ぐらいのサイズに急になったり、急に走り出すとあまりにも早すぎて目玉だけが残ってたり体の模様だけが取り残されたりします。
漫画の世界だからある手法だと思えるわけです。
 
ところが、実写の世界でもこういった手法は登場することがあります。
例えば、車のタイヤがある一定以上の速度になったら逆回転をして見えたり、これは画面を紙芝居のように切り替えてみているので 各コマの静止画がたまたま回転速度と同調すると止まって見えたり逆回転して見えたりすることがあります。
漫画的手法では、高速でタイヤが回っているとき、そんな処理をして速く回っているように見せるのですが これは外で車のタイヤを見ていても起きない現象なのです。
これはあくまでも自然に発生することなのですが 故意に発生するように仕向けるものもあります。
実際に目に見えるものよりオーバーに見えるような形の見方です。
これはテレビカメラなどでしか見れない現象なのですが、狭く小さなところで全体を見渡すような絵を撮るときに使う広角レンズなのですが 今でこそなのですが昔ながらということでいえば周囲が曲がってしまいます。
よくある魚眼レンズで周りを見たときのように、周囲が曲がって見えるわけです。
そのこと自身は光学的な問題で発生するわけですが 普段からそういった画像を見慣れているので小さなところを見るためにカメラが被写体に近づいた時に わざと周囲の像を歪ませてそういった効果を出す場合があります。
基本的には人の目で見るときには 実は歪んでいるわけですが勝手に修正してみているので 人の目では大げさには起きないはずの効果なのです。
つまりこれにより本物より本物らしい画像が出来上がるわけです。
これにより実際より 小さな物体を見るにあたり 顔を寄せ付けたように 見えないはずの小さなものを見ているような感覚に陥るわけです。
そんなことはないと思われるならぜひそう言った目でご覧になると 気が付かれると思います。
 
3Dの映像を作るときに立体に見えるのは左右の目でとらえる映像がずれているからで その二つのずれから距離を頭の中で想定しているわけです。
じゃあ、例えば鳥と人間で 双方とも目が二つで物を見ているわけですが この二者の間で異なる点があります。
それは右目と左目の距離です。
当然人は左右の目の感覚が広く 左右の像の違いが近くなればなるほどより大きくなります。
距離の近い鳥にとっては左右の差が小さいので 同じ脳の処理能力であれば 距離感の測定は遠くなればなるほど悪くなるわけです。
おそらくよっぽど近くに来ない限り3Dとして認識できていないのではないかと思います。
これは要求する物の差で、左右に分かれている目は人に比べてはるかに広範囲を見ていて 自分の敵となる動物の発見には役立っているわけです。
で、3Dの撮影の風景をよく写真などで見ると思うのですが、あのカメラどうですか??
人の目よりかなり左右の離れたものを使っていると思いませんか?
通常のカメラを雲台の上におかれた横棒の左右に1mぐらい離れて取り付けられています。
そして撮影しているわけですが・・・・
人の目はあんなに離れていないのでどう映るのでしょう?
 
実際に3D映画を見ていると びっくりするほど飛び出してきませんか?
まるで ほんの目の前 目から数センチぐらいを飛び回る虫のキャラクターなど ディズニーの遊園地に行けば見ることができます。
じゃあ本当にその距離に虫が飛んだとして、こんなにはっきり認識することができるでしょうか?
例えば目の前の人に、「はい」とぬいぐるみを目の前に渡されて あんなに迫ってくる感覚で見れるでしょうか?
このあたりはチューニングの世界ですが 3Dであることを明示的に理解できるようにする為には 簡単にこういった飛び出してくる画像が効果的なので多いこともあるわけですが 実際に見るものよりももっと本物らしく見せるための工夫がなされているのです。
前述の画像が歪むというのも3Dでも実は使われています。
左右の目で見たものが歪んでいることで 目の前に近いことを脳は認識します。
右目と左目の距離が違うと 頭の中でイメージしてみてください。
人の目の幅で 目の前10cmにさいころを置いて見える面と、1m離れたカメラで10cm離れたさいころを見ると 離れているほうはおそらく両側面を別々の目で見ているような状況になるはずです。
ということは 目の直前まで距離が近いのではないかと 脳は誤解を起こすわけです。
というわけで のけ反って「をぉ〜」とか叫んで3D映画は凄いなと思うわけです。
 
3D良いという言葉がありますが こういった間違えた情報を流されると余計にひどくなってしまうわけです。
実際にはないはずの画像を見ているからです。
以前に 片目分だけ見れば普通のテレビと同じかどうかという話がありましたが 実際の現実の3Dの映像をそのまま見るなら 確かに片目を瞑ってみるのと同じで困らないわけです。
しかし、左右の目の画像の違いで距離を測ることができるのはせいぜい十数メートル程度。
実際の普通の映画などを見てもらうと分けりますが その距離でずっと演じ続ける映画などなく 3Dを効果として感じるためにはそのための演出が必要で 演出の中には上記のようなものも含まれているわけです。
3D映画でノーマル版もあるものは、3台のカメラで 両目のカメラの真ん中にカメラを置いて撮影したりすることもあるわけです。
片目から得られる情報は非常に歪んだ 反対側の目があってようやく納得できるような映像の場合も少なくないわけです。
 
最初に例に出した 車のタイヤのパターンは 最近では当たり前のように思われていますが 実際にサーキットに見に行ったと横から見たときに止まって見えたり、逆回転するような あんな現象は起きないわけです。
ですが、既にテレビなどでしか見えないこのパターンに頭が慣れているわけですし、それをみれば高速で回っていると認識するわけです。
そうじゃない 家で見てもなるという事かもしれませんが、これも蛍光灯の光の点滅でストップモーションがかかっているからなのです。
ですが、蛍光灯もインバーター式とかになって 点滅速度が高速化して すでに蛍光灯ではああいった画像が見れなくなってきているのです。
恐らくテレビもこのまま高速のリフレッシュになると同様にあの手法は使えなくなり それ以降の世代にはあの表現はなんだろうと解らないこととなります。
本物より本物らしい、偽物料理のような演出がなされているわけですが 実際のものを見たときにどう思うかというと 疑問がないわけでも・・・・
written by HatenaSync