需要の創出

Twitterで出た話題なのですが みなさん「懐中電灯」ってご存知ですか?
流石に死語とはなってないので皆さん解ると思うのですが・・・
この言葉非常によくできていて
「懐中」は言葉通り懐の中つまり服のポケット等にはいる「電灯」電気を発光源とした灯りとなるわけです。
言葉通りの商品です。
現在ではLEDがメインとなっていますが 少し前までは電球式がほどんどでした。
 
デジカメで書いていたのですが 感光素子が大きくなるとレンズの奥行きが長くなりレンズ口径が大きくなるという下りなのですが
カメラに写真を撮るというのはもっとも単純な形で言えば前のレンズがあって そこに受けた画像を凸レンズで集約してそこが行き過ぎて逆転して感光素子のサイズまで広げたものです。
ということで 集約してから広がる面積は距離に比例するために 感光素子が大きいほど距離は大きくなるわけです。
同じことが懐中電灯でも言えて 近くを照らすだけなら良いのですが少し遠くを照らそうと思うと 反射鏡で反射させて光を集約させます。
電球の優れた特性には 発光部(多くは抵抗値の高い金属)に電気が流れたことによって360度球状に光が広がります。
故に、前方に光を集約出力したいとなると深い反射鏡が必要になります。
それだけでは光が細すぎて使いにくいので 使いやすくしようと思うと広くて前向きに光が集まるものが良くなり レンズの口径を広げることとなります。
というわけで 一般的な懐中電灯の多くは 単一型電池を入れて その直径の倍ぐらいのレンズ系を持った金属製の懐中電灯となったわけです。
もう一種類、それではバッテリーの持ち時間が心配なのと それを持って作業をするとどうしても光の出るエリアが狭いので もっと口径を大きくと用意されたのが単一電池が4本入って5〜6時間継続して光つづける懐中電灯となり この辺りはメーカーによってワークライト(作業灯)と呼ばれたりもしたわけです。
大よそ話の矛盾点に気が付き始めると思うのですが、じゃあ集めなければよいでしょう?? と言われそうなのですが
実は白熱電球というのは明るさ的にはそんなに明るくなくて 電球単体裸で使うと周りが明るくなるほどの明かりは提供できずに けっか集約せざる得なかったというわけです。
そして、単三電池の入ったペンライトというペン型の懐中電灯もあったのですが これはまあ携帯性が特徴で時間的にも1時間程度で消えてしまうというものでした。
 
断っておきますがここに書かれている懐中電灯は「白熱球」がたとかいてありますが 普通のフィラメント電球の物です。
何故、ここに断わったかというと 恐らく20代から30代ぐらいの人がイメージする懐中電灯は結構明るかったはず・・・となると思うのですが ここにイメージのずれがあると思うからです。
実はこの方々の知っている 白熱球型の懐中電灯は私の言っている懐中電灯に比べて2〜3倍明るいのです。
何で??と言われそうですが じつは「白熱球」の球(球って言う言い方も古いですね)そのものが違います。
このあたりは種類にもよるのですが 白熱球のフィラメントは電気を流すと抵抗値が大きくと発熱し発光しているのですが ある程度以上の電気を流すと切れてしまいます。
何故切れるのでしょう?話は簡単で発熱が流した電気の分過熱を続けて過熱しすぎて自分自身から出た熱で自分自身が溶けてしまうのです。
高熱になっても溶けにくいフィラメントを求めてみんな苦労して エジソンは竹を塩水につけて炭にして使ったわけですが 既にその時代は終わって電球の中を真空にすることで発光しても切れない電球にしたわけですがそれでも切れてしまう。
最も高熱に強い金属でフィラメントになるのは プラチナなのですがご存じのとおりこんなもので電球を作った日には電球一個で給料三か月分となってしまうわけです。
勿論、映画館の映写機の電球などは金に糸目をつけずに明るい物を求めたのでこういったものを使っていたりもしたわけですが・・・・
ところが、電球は一つのイノベーションを迎えます。
フィラメントにハロゲン化合物を使った電球の登場です。いわゆるハロゲン電球と言われる物なのですが こちらが明るいのはご存じだと思います。
車のヘッドライトがこれを使っていることが多いのです(現在はHIDなどもある)
こちらのフィラメントは過度に電気を流すことが出来るので明るいのですが 前述の理屈で言うと過度に流すと溶けてしまうわけですが この金属は面白い動きをします。
過度に電気を流すと 実はこのフィラメントは・・・・溶けてしまうのです。
えっ、ダメじゃん!!となるのでしょうが とけて良いのです。
電球の管の中は実はこの電球の場合は真空では無くガスが入っていて 熱で蒸発したこの金属がガスと化合すると金属に戻りフィラメントの所に帰ってくるわけです。
まあ、勿論フィラメント以外にも帰ってくるのですが まあフィラメントにくっついてまた溶けてまたくっついてとの循環を始めます。
じゃあ溶けるところまで電気を流しても大丈夫だねとなって明るい電球が出来たわけです。
これは前述通り 非常に明るくなって良くなったのですが 消費電力は元の明るさにすればバッテリーが持つのですが そうでは無く明るさの方に振ったのでそれほど電池の持ち時間には貢献しないものが多かったようです。
 
そのあと、これもイノベーションなのですが MAGライトです。
こちらのハロゲン化合物の電球なのですが クリプトンという元素を使った物で 乾球を小さくし必要以上の電力を太いフィラメントに掛ける事で非常に小さな電球を明るく光らせる事に成功し これによって懐中電灯は最初に出したペンライトのサイズで 一般的な懐中電灯の明るさにまで到達するに至るわけです。
小型コンパクトで非常に流行したわけですが 明るさを稼ぐために高い電流を流したために寿命はそう長くなく 電池ボックスの蓋に予備電球を入れて煩雑に交換する事を前提にした商品となる訳です。
この場合、非常に小さな商品ですが レンズと反射鏡が一体になった蓋を外すことでランタン的な用途として使える程に明るかったわけです。
 
で、最近は当たり前になったLED懐中電灯なのですが
こちらは電気エネルギーを熱に変化させずにそのまま光に変換しています。
故に非常に消費電力が低く明るい素子で 懐中電灯の用途にはピッタリなのです。
LED電球とか結構熱いよ!!と言われる人も居ると思いますが 半導体1個の大きさというのはむちゃくちゃ小さいのです。
お米にお経を書く人がいますが あの線の太さの数千分の一ぐらいの小さな点に1Wとか5Wとかの強力な電気を流すので発熱する訳でそれは細い電線に多くの電気を流したときに熱くなるのと同じことです。
熱を光に転嫁している訳ではないのです。
拡散させたいときには多くの粒のLEDを付けた懐中電灯。遠くを照らすときには3Wとか5Wとかの集合型チップのLEDを使った懐中電灯として登場します。
素子が小さく、前方にしか光の出ない性質から反射鏡やレンズの力を殆ど借りずに済む(電球とは逆に光を広げる為には使う)為にレンズの光景なども小さく薄く絞れることからどんな形にも作ることが出来るようになり ペン型だけでは無く色々なバリエーションも生まれました。
 
家電店に行くと ペン型の懐中電灯だけで30種類から50種類ぐらいおいてます。
それ以外にも首掛け型とか、フレキシブルとか ランタン型とか 本当にたくさんあります。
しかし、20年ほど前にさかのぼると 家電店にある懐中電灯は前述した 普通の物、ワークライト型、ペンライト型 精々三種類ぐらいの物でした。
それが 現在はこれだけの数です。
待ちを比べてみると最近は省エネが騒がれていますが 20年前と比べると町はずいぶん明るくなっています。
そのころは24時間営業の店なんて 幹線道路沿いにあるトラックの運ちゃん用の定食屋ぐらいでしたから その明るさの対比は言うまでもありません。
じゃあ、懐中電灯を使う場所は減っているのになぜこれだけの種類が??
正直、みんないくつも持ってますよね! 昔は精々一家に1〜2台
それが こんなにも多く・・・・
お客がいないでは無く 結果的に形や性能の変化がお客を生み出してしまったパターンなのですが 本当に需要が有ったのか?今でも謎が多いわけです。
ただ、おかげさまで災害が起きてもあちこちで明かりが確保できたという面はあるのですが これが昔の懐中電灯だったら恐らく あっという間に電池が切れて・・・となったことでしょうから。


 

written by HatenaSync