それも、ベストエフォートで・・・

最近、あまり使われなくなった言葉にベストエフォートというのがあります。
依然として、携帯電話のキャリアのカタログなどには必ず記載されている言葉なのですが
言葉の意味はというより 結構都合よくつかわれていることが多くなっています。
無線回線を利用した通信などではしくみ的に必ず起きるロスの部分が予想できないことから できる限り早い速度での通信を行うということを言っているだけで
速度が落ちてもしょうがないと言っているわけでは実はありません。
ただ、できる限りの早い速度が結果的に遅くても責任をとれないという解釈が成立するなら びっくりするほど遅くなったり時によってはつながらなくなる携帯電話のパケット通信も納得のゆく話ではあるのです。
 
これが携帯電話だけかというと実はそうでもなくて、固定の通信回線 たとえばADSLとか光ファイバーによる通信においても同じことが起きています。
ADSLの場合は、通常高周波な信号を通すべきでない電線に無理やり送り込んでいるので 理論値通りの速度など研究室の中でも出なくて その上 距離による減衰も大きいために携帯電話の通信と同様な速度低下を引き起こします。
光ファイバーの場合は 伝達ロスをほぼ考慮に入れなくても良いことから速度は常に・・・といいたいところですが こちらはシステム的な問題で速度低下が起きるわけです。
1Gbpsのハブに複数台のPCを繋いで送受信をかけたときに 同じ電線に複数台のPCの信号が流れることになります。
その際に どの電線も1Gの速度だった場合 8台つながって 同時に通信した場合 1/8に速度が落ちたりするわけです。
1対1の専用線を用意しない限りこの問題は起きるのですが もともと、インターネットという回線はそういう仕組みで多くのPCをネットワークにつないでいるためにこの問題は避けられないのです。
地震が起きた直後の気象庁の ホームページがアクセスが極端に遅くなるのを見てもわかると思います。
 
携帯電話の通信に関して、比較的スムーズにこのベストエフォートという言葉が受け入れられたのは 一つはADSLでその通信速度が理論値なんてとんでもない速度しか出なかったという実体験をみんなしていたからというのもあります。
しかし、それ以上に携帯電話では つながらないこともあるという電波という媒体を使っているゆえの不安定さを身をもってみんな知っているからこそ 理解が早かったわけです。
ゆえに、速度が出なくても 極端に暴動が起きるほどの騒ぎが起きてないわけです。
もちろん、個人的には暴動を起こしたいことも少なくないわけですが・・・・
 
最近、話題になったのは「Line」というサービスを提供している ソフトウエアープロバイダーをソフトバンクが買収しようとしているという話題。
時を同じくして 楽天Viberを買収したことからもこの話が やたらに真実味を帯びたわけです。
この会社の何に注目をしたかなのですが 一つは音声通話でもう一つはSNSとしての機能です。
Lineは言うまでもなく SNS+無料通話で話題になっていて そのSNS内で使える絵文字の「スタンプ」の販売なども好調のようです。
ただ、企業としての収益はそれほどでもないようですが サービスとしての利用客の多さは日本では一番なのではないでしょうか?
このアプリを使うことで使っているユーザー同士は無料で通話をし、SNSでは既読確認機能がついて 相手が読んでくれたかどうかまでわかることが良い点と悪い点を作っているようです。
 
まあ、SNSの話はよいとして 音声通話の話。
多くの音声通話サービスがこういったアプリケーションに設定されていて 私もLalaCallなどを使っています。
マイクロソフトが推奨している Skypeというのもありますね・・・・
それらすべてが別のアプリケーションベンダーが提供しているのですが 概ね070を市外局番に持つIP電話番号が付与されて 固定電話程度の料金で通話ができます。
もちろん、同じアプリケーションを利用しているユーザー同士は 無料通話ができるという形になっています。
ゆえに、VoLTEと呼ばれる 音声通話をLTE回線で行う規格そのものに思ったほどの注目が集まらないという現状があるわけです。
 
Ip電話と携帯電話の音声機能の何が違うか?という話なのですが
前者は 既存のネットワークを利用した音声通話システムで、後者は専用の回線を利用した音声通話システムです。
極端な話、音声をデジタルデータ化してパケットで交換するという仕組みは全く同じものでもOKなわけです。
どちらかというと IP電話のほうが新しい圧縮方式などを使っていて 音声の品質などもよい場合のほうが多いわけです。
そんなことはないといわれそうですが 事実プログラムの部分だけで言うなら間違いではないのです。
携帯電話の音声機能が駄目なのかというとそれは全く違う話で 上記の部分は同じとしても回線そのものの品質には大きな差があるわけです。
音声通話用の回線は 一定量の帯域を必ず確保して 他のネットワークと混在しない場所に置かれています。
そして、基地局と一対一の関係で接続することから 音声通信用の帯域は常に優先されて確保されます。
ゆえに、通信という意味では非常にクオリティの高い回線が確保されているわけです。
それゆえに 遅延の少ない、高品質な音声通話ができるわけです。そこに大きな差が存在するわけです。
エラーが出た際に動的に 速度を変化させたりというめんどくさい不確定な要素を考慮する必要がないわけです。
 
最初に書いた通り 携帯電話のデータ通信はベストエフォートという形で 速度保証型ではありません。
そのネットワークを使っているのが アプリケーション型のIP電話です。
と、いうことは極端にデータ通信が遅くなるような事態になった時のことを考えてください。
極端に遅くなると 音声通信そのもののデータの伝送がうまくゆかなくなります。
ある時はしゃべった1秒後に相手に声が届く遅延になったり、同じ部分を何度も繰り返すような輻輳が起きたり、最悪の場合は音声通話そのものが切れてしまったりするわけです。
と、いうことはアプリケーションによる音声通話に関しては やはりベストエフォートで・・・・
 
定額制のパケット通信がほとんどの方が利用しているデータ通信契約です。
それに対して ほとんどの携帯電話では音声通信は時間により課金される従量制です。
ベストエフォートという通信方式が成立するのはあくまでも 定額通信もしくはデータ量に見合った従量制という仕組みがあってこそです。
上記のように アプリケーション型IP電話より電話を掛けたときに データ通信の関係でうまく通話できなくて 無駄に時間ばっかりが過ぎていったとしましょう。
たとえば 相手の声は聞こえるけどこちらの声が届かないなど。
ただ、時間による従量制なので 接続されている時間中 料金は加算されてゆきます。
切断されて接続しなおした際には 1回につき最低減の料金 8円だったり10円だったりが加算されます。
時間的従量制でありながら ベストエフォートという面白くない料金体系の通話となっているわけです。
 
いくつかの アプリケーション型のIP電話の約款などを頑張って読んでみたのですが こういったことに対する補償をうたっているような項目を見つけることはできず
さて、この問題 わかっている人がいるのかな??なんて・・・・
written by HatenaSync