Miss Lは、ローズバスが大好き 7

夜に弱いほうではないつもりだった。
今までも徹夜で仕事をこなす事なんてへっちゃらだった。
でも、こんなに辛いのは初めてだった。
昨日は、おかげで警察が帰るのと同時に家に帰って泥のように眠った。
体も精神も疲れ果てていた。
で、明けた今日 仕事はひるからでいいからゆっくり寝てくださいと言われていたので 昼過ぎまで寝ていた。というより起きなかった。
起こされたのは、Mr.Gからの電話でした。
Mr.G:「昨日、タクシー代をお渡しするのを忘れたので・・・」
出来たらゆっくり寝ていたかった。気の効かない人だと思ったが 実際 昼過ぎまで待っていた訳ですから優しいのかもしれない。
「おはようございます、もうすぐお伺いしますのでそちらでお話はお伺いします。」
冷蔵庫のなかのご飯が、昨日食べなかったので三日目、ここで食べなきゃもったいないお化けが出るので 暖めて 虎の子の特製岩のりの佃煮で食べた。
この何時までも磯臭い匂いがたまらない。もう、最後の一さじ。
また、機会があれば 千葉まで買いにいきたい・・・・
あまり美味しくないご飯だったけど、お腹の足しにはなった。出がらしのお茶でも喉の渇きを押さえるのには不自由しない。
それよりも、昨日は服を持って帰れなかったから 流石に事務所でファッションショーをするわけにも行かず 袖も通せずに帰ってきたのでそれだけが残念で やる気を出して 愛車の自転車に乗って職場に向かった。
Mr.G:「明日が締め切りなんだ・・・・」
慌てる、Mr.Gが待ち構えていた。
30分ほど言われるままに記録を続けた。と、言うところで喋るペースが落ちて そのまま喋るのが止まってしまった。
沈黙が続く 20分、30分、40分・・・・・
Mr.G:「取り合えず、ご飯でも かってきてもらえますか?」
「取り合えず、ごはんでも???? えっ、これは私に言ってます?」
途中まで書きかけて、あまりにも文節の繋がらない台詞に効き返した。
Mr.G:「そうです、どうも時間がかかりそうなので ご飯を先に食べましょうか?」
「あっ、はい!なんになさいますか?」
Mr.G:「出前はPCのデータベースに登録されていますので 何でも・・・」
履歴を見ると、中華料理が多かった。といっても中華料理でも特定のジャンルだけに限定されていた。
ラーメン。それも きまったように醤油ラーメン。日によって違うのはご飯がつくか つかないか。
それも、一軒の店だけではなく 何件か違う店の履歴もあるが 決まって醤油ラーメン。
ミソでも塩でもない どうもラーメンマニアらしい。
ソファーにいつも通り隠れているMr.Gはから小さな唸り声が聞える。
どうも悩んでいるらしい。
でも、醤油ラーメンのような気がする・・・・ 私は、天心飯にしようかしら?
と、考えていたら やっぱり醤油ラーメンだった。
インターネット上の登録画面で注文したら、15分後ぐらいの到着時間が出た。
来までの間に、お茶を入れた。暖かいお茶が美味しいでしょう。
丁度台所にあったほうじ茶を入れた。
Mr.Gには悪いけど 新しいお茶をふんだんに入れさせてもらった。家では出来ないささやかな贅沢だった。
Mr.Gの机の上に湯気の立ったお茶を置いた。
難しそうな顔をした、Mr.G。でも、難しそうな顔なのか 肉に目と口が埋もれているのかの判別は難しいと考えたら 少し笑えてしまった。
「Mr.G 何で私を採用したのですか?」
いきなり、仕事をもらえた疑問を聞いてみた。
「用心深くて、頭が良くて、そして、一つの事にこだわらなさそうで そして、私の文章を書くのに十分な能力があったようだから」
すらすらと、何も考えないかのように答えた。
「用心深いって言うのは 何ですか?」
Mr.G:「求人情報を怪しいと思った。しかし、条件が良かったので警察経由で確認した事。恐らく 警視庁公認という事を確認しようと電話をかけたように見せかけて確認するつもりだったのでしょう?」
「はい」
何故か、その時の気持ちまで当てられて どきっとした。
Mr.G:「そして、こちらからの問いかけには、警察経由で情報が漏れた可能性が大きい事を確認し、ここまで来た事。そして わざわざ、ゴミ捨て場のかぎの番号を書いていたのにも関わらず それに囚われず呼び鈴を鳴らした事。十分じゃないかな?」
続きで効くはずだった事まで答えられた。
「でも、最初のことはともかく あとの事はそんなに難しい事を考えたわけじゃないんですけど」
Mr.G:「推理小説を解いている訳ではないんですよ、自然とした行動の中に 無意識のうちにそう言ったことが出来る事が大事なんじゃないかと思います。」
「そういうもんですか?」
少し照れくさくてそう言った。