規格と基準と実際

私は文章を書く際によく たとえ話をします。
例えなくても良い物まで例えてしまうので余計に判りにくくなっていることは間違いないのですが・・・
仕事柄電線を触る機会が多いので人に聞かれることも多くそのたびに受け応えはお面をかぶったように表情を殺して行います。
本気になると長くなってしまうからです。
長くしゃべってもお金にならないので、仕事の効率上ふさわしくないのです。
 
電線は、電気を通す道です。
金属で出来た導体が効率よく電気を通せるようにした物です。
多くは銅の合金に合成樹脂の被覆をかぶっています。
ネクターは分岐点みたいな物で、その分岐がうまくゆくかで電線の性能が変わってしまうようなものです。
私は人と話す上でよく電線を道路に例えます。
では、コネクターは分岐点。分岐合流がうまくゆくかどうかで渋滞が発生するかどうかが決まってくる大事なポイントです。
ネクターの勘合が悪い状態は、3車線ある高速道路を1車線に絞って合流するような物。
接続点が小さければ、電気の流れる場所が小さくなり同じような状況が起きます。
目を閉じると浮かんでくるのが、窓から腕を出して下品に怒鳴るドライバー、鳴らしてもしょうがないのに無駄にクラクションを鳴らす人。
計らずもがなコネクターの温度は上昇してしまうわけです。(これはたとえとちょっと違うか)
逆に、コネクターだけが広すぎると、接続で6車線になった後いきなり3車線に絞るとこれも混乱を招く場合も有ります。
故に規格があり基準となる推奨されるべきコネクターが存在します。
その上で、規格基準に満ち足りた電気の工事となります。
多くの場合、それでもコネクター部の発熱ぐらいで済んでいるのですが、これが高い周波数を含んだ電気の場合 そういった問題が一気にクローズアップされてくるのです。
例えば、同じ距離にありながら速度に大きな差のあるADSLの伝送速度もこういった部分が大きな問題になるわけです。
 
高速道路の制限時速は100km/hです。もちろん、場所によって制限されるべきこと 例えばカーブだったり、路肩が細くなったりと 僅かに十数パーセントしか100km/hで走ることが出来ないと判っていても 一応100km/hなのです。
高速道路は100km/h制限と言うのは何故でしょう?
設計速度は多くの場合120km/hです。
故にマージンをもって100km/hなのですが、実際問題120km/hどころか200km/hを超えてゆく人もいます。とある漫画などは 200マイル(320km/h)の戦いをしていますから首都高湾岸線は逸れに耐えうる道路なのでしょう。
では、この道路の限界速度は300km/hなのでしょうか?
120km/hの設計速度は何なんでしょう?
日本の車は優秀で、日本の電気も優秀です。
電気は多くの場合5%未満の電圧の変化で供給されます。
利用される電気の量などが刻々と変化する状況で安定して電気を供給する技術はすばらしく、日本ではUPSなどが一般的にならないのは恐らく電機の品質が良すぎるからではないかと思ったりもします。
海外では、家にもコンピューター用の小型のUPSを置いている家が少なくありません。電圧の変化でコンピューターが止まってしまうことなど日常に有る国も少なくないのです。
国産車もしかり、非常に優秀で100km/hぐらいは手放しでもまっすぐ走ってゆくのが当たり前の基準でしょう。ところが車の世代を30年ほど前に戻してみてください。
私も昔乗っていましたが例えば70年式のmini クーパーなどに乗っていたときのこと。10インチのタイヤは非常に小さく(現在のタイヤは15インチぐらい 軽でも13インチクラスが多くなっています)この車で100km/hでればレースに参加できるという名言をはいたドライバーもいるように、この車での150km/hは既に命がけの世界です。
道路に重量を大幅に超えた車が走るからか、談合で接待にお金がかかりすぎて材料費が出なくてしょうがなく安普請につくったからか波打つ道路に差し掛かれば、小径のタイヤは簡単に跳ね上げられ瞬間的に隣の車線の半ばまで飛んでゆきます。
もちろん、整備は十分にされているノーマルのクーパーです。これでも通常のMiniと違いハイドロ差すの付いたモデルです。
 
つまり、フェラーリーが300km/hで走れることが基準ではなく、恐らくどんな車でも安全に100km/hで走れる道路であるということなのでしょう。
話が逸れますが電線もそうで、道路で言うところの道路が傾いていないかとか、道路にでこぼこが多すぎないかとかでこぼこの山が多すぎないか等々と同様に、電線の表面が錆等で劣化していないか、抵抗値が増えていないかとか、曲げすぎで分子の組成が圧迫されて抵抗になっていないか等の規準があります。
このあたりは新しく買ってきた電線であれば電線メーカーさんが担当する部分。この後コネクターをつけたりするのは現場の仕事。
分岐点が正常に繋がっているかどうかなのですが、これを決めるのに規格があります。
 
ところが、ラリーカーを持ち出してきてこれぐらいのでこぼこなら大丈夫とか、ポルシェを持ち出して250km/hは大丈夫でしたという評価がまかり通っています。
いえ、これらはまだいいのです。
国産車の多くが設計速度120km/hの道路を160km/hで走れることから、道路の設計速度を80km/hや60km/hに引き下げる工事がされていることがあるのです。これは、意図してやったというよりも結果的にそうなってしまった場合が多いのですが どちらにせよされた側にとっては由々しき事態です。
多くの日本車を持ってきて100km/hで走れるから大丈夫と言うのは、規格上の設計速度の概念ではないのです。
たとえどんな車を走らせるにしても、設計速度が120km/hとされているのであれば祖売った道路を作らなければいけないように、電線の施設も規格で決まっている物があるならその規格に適合した工事をしなければいけないと思うのですが どうもそういった意識は希薄なようです。
その方々が悪いというわけではないのです。
もちろん、個人的に勉強されている人もいますが時代は変わっています。
免許制度が一度習得すれば継続される資格であれば、その後の時代の変化を見ていなくても仕事は出来ます。
規格認定側も、時代に全然追いついていなかったり 頑なに新しい工法を認可しない状況であることも確かです。
 
ADSLの工事でも、いまだにおかしな配線をする工事業者の方がいらっしゃいます。「アナログの電話の時代はこれでよかった」とか「伝送速度が低いのはADSLだからしょうがない」とかで納得いただいているようです。しかし、自分でDIYするキットやその為の高性能な電線なんかも秋葉原では販売されています。
本来この部分は「プロ」と呼ばれる人が担当される部分だと思っていたのですが、私の考え方が若すぎるのでしょうかね?