電気を流すもの、流さないもの

金属でできた本体は質感が高く・・・・ 作りの高級さを・・・・
なんて、昔からよく聞かれた話です。
小型のガジェットは、軽量であることと同時に肌に触れる機会が多いもので その質感も重視されます。
ただ、軽量、高機能が重視されて その上とことん下げることを要求される価格のおかげで樹脂製品がほとんどになってきました。
そして、高級感や丈夫さ(実のところ本当に丈夫かは疑問)を追及して 金属ではチタンやアルミ合金、新素材ではカーボン等が使われてきています。
同じものがあれば素材を新しいものにするだけで付加価値が上がるというと チャレンジするメーカーも少なくありません。
それなりに出てきたりしたのですが、なかなか問題が多い。
樹脂成型では問題にならなかった電気を流すものという区分が・・・・
 
以前は金属ボディは、それ自身がシールドになりアースとなり電気回路には良いことばかりに思われる素材でした。
ゆえに金属製品が多く、逆に樹脂成型する際にはシールドの必要な所に金属製部品をかぶせたり シールド効果のあるカバーのついた部品をつけたりしました。
ところが今になってみると、逆にその扱いに困ってしまいます。
ここでいう金属以外にも、カーボンは導電体で同じような効果が出てしまうことがあります。
たとえば、例に出しますとNOKIA E61なのですが、本体の多く 裏ぶたに至るまでマグネシウムでできたボディです。
ところが裏ぶたの上側、受話口の裏側辺りの一帯だけがプラスチックパーツでできています。
実際のところは人に聞いただけなのですが、先日キーボードあたりを弄るのに実感しました。
爪を押して外す構造になっています。この部分だけが・・・
 
プラスチックと金属の差は強度以上に大きくなるのはその質感です。
新品購入時には気がつかなくても、長い間使っていると同じ塗装にもかかわらず金属と樹脂の色が徐々にずれてゆきます。
気がつくと、違うんだと思わされます。
では、何故この部品が金属ではないのか? その理由の最たるものは金属は電気を流すが故に電波を阻害してしまうのです。
「シールド」を日本語に訳すと「盾」となります。
言葉通り電波を防ぐ盾になるのです。
NOKIA E61には周波数の違う電波体を捕まえるための電話用のアンテナがおそらく2本(想像です)。
Wifiの周波数用に1本、Bluetooth用に1本とすると合計4本のアンテナが(もしかしたら3本)乱立します。
特に、WifiとBluetoothは近接した周波数帯なので近くに配置すると同時に使うと相互で干渉を起こしぐっと感度が低くなります。
もちろん、最も露出の大きい解放されるべき場所に配置したいのがアンテナの置き場所です。
よく考えれば昔はロッドアンテナやアンテナの張り出しがあって、360度どの方向にも阻害される部品のない配置だったのです。
それが、ポケットに入れるのに邪魔だからとか性能面でない理由で中に押し込まれたので こういったことも起きます。
 
ICカードであるとかを内蔵するとその部分にもアンテナは必要です。
1mm角のICタグができたといっても、その性能の素晴らしさは価格にあり 1枚のシリコンウエハから沢山取れるということは価格に直結するからです。
よくあるクレジットカード型のICカードであれば日に透かしてみればわかるとおり、長辺の端から端までのアンテナが見えると思います。
やはりアンテナに使える面積が必要なのです。
日本の携帯電話などでもICカード部分には樹脂ケースだとしても大きな開口部があり、以外に上から片目の樹脂版を貼り付けて埋めてある形状のものが多いようです
 
サイズは小さく、質感高く、電波感度はよく、そのうえ安く、もちろん軽く
市場の要求はきつく、メーカーはできる限りこたえようとする。
開けてみたNOKIAの中に見えるアンテナに先端技術と技術者の悲哀を感じたりして・・・