伊藤探偵事務所の憂鬱97

arieさん:「それは運命に流された訳? whocaさん」
whocaさんは 一言もしゃべらなかった。
喋れなかったであろう。
arieさん:「そしていつかの人と同じに、洞窟にこもって死んじゃうつもりだったわけ? 運命に従って」
「arieさん、いくらなんでも言いすぎでしょう!」
王:「全ては、私の統治が悪いせいなのですね arieさん」
arieさん:「そうかもしれないわね、あたしにはわからないけど」
whocaさん:「違います、誰がやってもこれ以上の結果は無かったんです。王が生まれる前から・・・」
arieさん:「へ〜、そうなの 何で生まれる前のことまで知ってるの?」
whocaさん:「私の母が、見た将来です。 不幸に成る事は判っていても避けられなかったと・・・・ いつも王には家で詫びていました」
arieさん:「で、運命だけを嘆いていたわけね 貴方も、貴方のお母さんも」
whocaさん:「こんな能力なんか無いほが良かったのよ。私にも、母にも」
王:「それは違う、その力が在ったからこそ 今の私が、そして国があるんだ。貴方が神を信じなくてどうする。神は必要の無いものを人に与えない。」
whocaさん:「王・・・・」
王はあくまでもwhocaさんをかばった。
arieさん:「残念ながら、神はいないわよ」
whocaさん:「何を仰います、私は神の言葉をお預かりしています」
arieさん:「じゃあ、世界を変えて見せなさい その力で」
whocaさん:「私にはそんな力はありません。ただ、神の声が聞こえるだけです」
arieさん:「じゃあ、いないのも一緒ね。何にも出来ないんだから」
「そんなことは無い、whocaさんの予言があったからこそ 僕たちがここにいるんじゃないですか!! 確かに僕は役に立たなかったかもしれない でも、所長がいて、arieさんがいて、ぬりかべさんがいて 西下さんがいて やまさんがいて 全ての人が揃ったのは偶然では片付けられないでしょ」
arieさん:「whocaさん、そうなの?」
whocaさんはいつの間にか立ち上がっていた。
さっき、王を庇って喋った頃からだと思う。
白い体を、うす赤く染めて、さっきまで目から止め処なく毀れていた涙はいつの間にか止まっている。
下を向いて、いつも目を伏せていた顔が 怒りを含んでいるのかarieさんの方に向かって大きく目を開き 閉じた口は一文字に縛られていた。
右の拳は、、腰の辺りで白く色が変わるほど握り締められ いつの間にかその横に座る王が、左の手を握り締めている。
最初は震えていた体が、王の手によって支えられているかのように固定されていた。
whocaさん:「私は、私の信じるものの為に 最も良いと思われる選択をしました。それだけは確かです。そして、それがどんな結果になるとしても わたしの責任です。」
沈黙が流れた。

所長:「もうそれぐらいでいいんじゃないか? arie君」
arieさん:「よくも、ややこしいお目付け役をつけてくれたわね」
所長:「いえいえ、彼ぐらい純なほうが・・・俺じゃあ、パンチが飛んだでしょう?」
arieさん:「一発貸しよ、ここで倒れられたら困るからね」
「えっ、所長? arieさん?」
arieさん:「気が利かない子ね、あんたがぺらぺら喋るから whocaちゃんの喋る事が無くなっちゃったじゃない!!」
大きな声でarieさんが怒鳴った。
「すいません」
何が何だか判らなかったが、条件反射で謝った。
arieさん:「whocaちゃん、貴方が最初からそう言えば 私たちは助けに来たのよ。私たちは神を信じない。私たちは私たちの力でどんな状況でも切り抜けてゆくの。神なんてましてや予言なんてまっぴら! 人生楽しくないじゃない!?」
arieさんは一転してやさしい表情になり whocaさんに諭すように言った。
whocaさんは糸の切れた操り人形のようにその場に崩れた。
kilikoさん:「お嬢様 準備が出来ました」
いつの間にか入ってきた kilikoさんが言った。
所長:「どうも、花嫁は立てないみたいだけど 抱いてあげないのですか?」
崩れたwhocaさんの手は王が未だ握っていた。
王:「勿論」
王は言ってwhocaさんを抱き上げた。
whocaさん:「王、おやめください」

kilikoさん:「失礼します」
広げた手には、白いレースを持っていた。
kilikoさん:「1分ほどそのまま・・・」
kilikoさんは、すばやい手つきで、白いただのレースの生地を折り曲げ ピンで留め、糸で括って 言葉どおり一分ほどで花嫁のベールに仕上げた。
kilikoさん:「さあ、出来ました 皆様がおまちですよ」
いつの間にか引かれた赤い絨毯が王の寝室から、ロビーに続くバルコニーまで引かれていた。
後ろには、白い服に着替えた、arieさんとKAWAさんが続いた。