トランスメタの売却?

あちこちでそういった噂が流れています。
いま、トランスメタのCPUで無いと出来ないであろう 「OQO」や「FlyBook」が話題になる中で。
プロセッサーの進歩は毎年目覚しく、現在のように停滞したと思わせる時においても 新しい技術の採用や、速度の向上は当たり前のように行われます。
すでに、その性能に誰もが不満を持たなくなったとしても、その中での特定の用途に向けた拡張が続けて行われています。
例えば、エンコードなんかで使う処理の高速化を計るためのMMX Extentionの拡張や、バッファオーバーランを悪用した ウイルス対策の追加等。
今であれば、流行は64Bit追加機能でしょうか。
実際問題、一部の大多数を占めないOSや 一部のアプリケーション以外では有効ではなく現在の所 多くの有名なOSを使っている大半のユーザーには宝の持ち腐れ。
いざ、そのOSが出た時には 買い換えて使うんだろうか?といった疑問も生まれてくるのですが 決して安くない そして恐らく何もしないであろうOSにそれだけのお金を払うのか?って 一般家庭で使って大それた事をしないのであればただの無駄遣いになる可能性の高い行為です。
ですが、損得で考えると ついていないより付いているほうがずっとましに思えてくるのは不思議な感情ですね。
恐らく、初代のAthlon64を買った人は2年目でしょうが 64Bitアプリケーションなんで動かしたことの無い人が大多数でしょう。
もし動かしたとしても、AMDの配布している(かな?)ベンチマークテストぐらいじゃないでしょうか。
もちろん、物の所有欲はその機能を全て使い切るところに発生するわけではなく その機能が付いていることだけにも有りますから そういったものではないでしょう。
フェラーリーを買う人全てが320Km/hを体験するわけではありませんから。
逆に、いぶし銀のように地道にやっている会社もあります。
1G足らずのCPUを付けた1ボードで全て動くような構成にし、速度や機能は程々でも安くて熱が発生しない(消費電力が少ない)ことを売りにする会社。
こちらは組み込み型機器に多く採用され、実際には1プロセッサー当りの販売数ではトップクラスの機種より時によっては多い販売数を示す物もあります。
これはこれで、必要な物です。
じゃあ、トランスメタがどうなのか?
多くの見解としては、「時代が悪かった」の一言に尽きるのではないでしょうか。
発売当時は、幾種類かあったプロセッサーも トランスメタがエミュレーションして動作させるものが IntelのPentium系だけになってしまったこと(Powerプロセッサーは搭載される機種が限定され、採用メーカー大手2社は囲い込みで他社参入が出来ない)で、CMSであらゆるプロセッサーに化けるはずであったプロセッサーが いつの間にかIntel互換メーカーになってしまったこと。
思ったより早く、クロック競争が頭打ちして そちらに伸びない事をどのメーカーも別な部分 省電力や1クロック当りの性能に振り分け始めたこと。
もちろん、クロックが伸びないことが せっかくのLongrunの技術の採用を見送ってしまったメーカーが意外に多かったこと(でも、この分野は黒字だそうです)
そして、最大の理由は(私が思っているだけですが)パートナーとなる会社を見つけられなかったことではないかと。
トランスメタは、ベンチャー企業です。
大きな夢と、革新的な技術をもった技術者たちが 世界を変えるべく立ち上がった会社です。
しかし、そういった会社であるが故に もともとの資金が無く多くを借り入れや出資に頼っています。
もちろん、その出資者はトランスメタのその後に掛けた訳なのですが・・・
概ね世界を変えることは出来たでしょう。
蟻(トランスメタ)が巨象(Intel)に省電力型プロセッサーの必要性を認識させたのですから。
恐らく、この事がIntelの今を助けることに成っていたとしても。
ただ、資金の問題は 打ちでの小槌を持っている訳ではないので どこかで回収する必要があります。
しかし、一時的なクルーソーの成功はありましたが その後の進歩がありません。
と言うと、実際は大きく違うのです。
CMSのバージョンアップや、CPU自身も3度ほどリビジョンが変わったりもしています。しかし、悲しいかなCPU以外を開発することにリソースを割り振れなかったようです。
サウスブリッジと言う、外部とのI/Oを司る部分は社外のものを流用しました。
そのこと自身はともかく、その接続方法にはライセンス上問題の無い接続方法で あまり高速の接続が成されない形で決められました。
その後の進歩は明らかで、CPUの速度の向上が鈍ったのを待って、I/Oの速度を上げることで全体の速度を上げる方向に進んでいます。
モリー、HDD、BUS等の速度は飛躍的に進歩しましたが 主流がそちらに行ってしまい すでにトランスメタチップセットとなれるのは、時代の進んでいないチップセットのみ。
CPUの評価以上に、コンピューターとしての評価が下がり(遅いと)悪循環になったところに Intelのセントリーノの登場。メディアを使った大規模な宣伝で モバイルはintelといった刷り込みを成功させてしまいました。
ノースブリッジの統合化さえ負担の重い作業で、虎の子のエフィッシオンが出た時には、時既に遅く すでに市場の関心が別なところに行ってしまった後でした。
エフィッシオンは恐らく良いCPUで、消費電力や速度もさることながら モバイルセレロンを下回る価格は立派で、独自のパワーマネージメントはお家芸とも言える技術で、僅か3秒のレジュームを可能にしたのですから。
もし、今からエフィッシオンが売れて行ったとしても 既に時遅しで この流れが変わるものではないでしょう(爆発的で無ければ)。
最初のところであった、高速型では無く 省電力型に分類されるべきプロセッサーながら組み込み市場に食い込めるボリュームは無く SSE等のマルチメディアエクステンション等に追尾して、そのコストを上げてしまった以上 大手に適うわけも無く 苦戦したのでしょう。
トランスメタの進んだ道は、無駄ではなく世界を変えました。
これからも、プロセッサーの生産を手放しても 回路設計のライセンスの提供という形では新たな結果も残せるでしょう。
ただ、表舞台に出てくることはあまりなくなるのではと思います。
私は、よくマイナー路線だと自分でも言っています。
最初のトランスメタの発表では、開発者の熱意がそのままぶつかってくるようなキーノートスピーチでした(もちろん、言葉はわからないので感性の世界です)。
それを知っていれば、トランスメタプロセッサーからも 情熱が迸っているようで大好きなんですが。
特に、赤字が続いて資金不足でスケジュールの遅れる中 発表したエフィッシオンにはトランスメタの夢が詰まっていたようで。
こういう話があると、感情移入しちゃうんですよね(マイナー系)