伊藤探偵事務所の憂鬱80

やまさん:「fire !!」
後続の機体への体当たりに進路を変更したにも関わらず 前の機体への照準は殆ど狂っていなかったのは 恐らくやまさんもこういう事態を予測していたからであろう。
ジェットの一閃で後続のヘリが離脱したときに発生した気流が 機体を大きくゆする。まるで攻撃を受けて手負いになった獣のように。
狙いは一直線に、前の機体の尾翼に集中した。
当っている音が聞こえるかのように 兆弾が発生している。
距離があることも原因だが 全ての当った弾が跳ね返されているようだ。
やまさん:「無闇に硬い鎧を着てやがる」
西下さん:「このまま特攻しますか?」
やまさん:「結果は同じだろう 無駄はしねえ」
西下さん:「でも、お願いします」
やまさん:「わかんねえやつだな」
あいも変わらず文句を言いながらも、機体を操るやまさん。
弾を発射しながら距離を詰めてゆく 近づくにつれ 弾の当るのが明確に解るようになった。
やまさん:「しかし、硬い鎧だな」
西下さん:「弾が弱いんでしょう」
やまさん:「うるせえ!」
ぎりぎりまで近づいたところで、ジェットの気流の乱れに備えるやまさん。
その瞬間、やまさんの目前から相手の機体が消えた。
西下さん:「左へ90度 全速で」
やまさん:「ちっ」
機体は地面に向かって真横を向き 旋回を始める。
西下さん:「下です」
ヘリは、その機動性を利用して 真下に降下していた。
そしてその場で向きを変え 弾がこちらに軌跡を描きながら飛んできた。
機体のすぐ後ろを 4条の白い筋が走っていった。
やまさん:「急旋回は体に悪いだろう」
西下さん:「すいません そのままもう一機を追って」
少し高い高度にいたもう一機に向かってそのまま旋回を続けた。
かなり危ない状況であることは確かなようである。

城内の混乱が収束を始めた。
国王の親衛隊を除く多くの兵達が 自分の掲げるべき旗を明確に意識してない現状である。
戦闘が収まったと言うより、逃げ回っていて戦闘にならないと言う場面がたくさん発生している。
無線は、敵味方同じ物を使って通信するためにその混乱は尚も増大した。

部屋のドアからもれ出る光が 段々穏やかになっていった。
それよりも、不快な気分が和らいできた。
とともにKAWAさんの匂いが・・・・・
所長:「人のことを言う割には自分は楽しんでいるじゃないか」
いつの間にか目の前にやってきて 目前で所長が言う。
「あっ、違います」
KAWAさん:「何が違うのよ!?」
「いえ、それも違います」
なんだか解らない答えである。
所長:「ごほん、KAWAくん 私には?」
KAWAさん:「うーん・・・・ほっぺに ちゅ」
僕から手を離した、KAWAさんが所長のほっぺに軽くキスをした。
いつの間にか、帰ってきたぬりかべさんがほっぺを出して待っていた。
全員の視線を感じたのか、そのまま持ち場に帰っていった。
所長:「さあ、中に戻りましょう」
幾分、不満そうな所長は王の寝室に戻った。
ひざを付き、口からよだれを出し 焦点の定まらない目をした大臣がそこにはいた。
所長:「どうだった? arieくん」
arieさん:「王の器じゃないわ、歴史の重みに耐えられなかったみたい・・・・」
所長:「そりゃーそうだろうな、さて、これからどうするかだが」
arieさん:「やりましょう、戴冠式
所長:「誰の?」
arieさん:「あなたのよ KAWAちゃん 手伝って」
arieさんとKAWAさんは所長を飾り始めた。
王冠、マント、どう見ても僕には仮装行列にしか見えないが王の正装なのであろう。
arieさん:「と、二人の巫女」
所長:「そういうことなら、ここに巫女の衣装が」
「所長、どうしたんですか? そんなもの」
arieさん:「決まっているわよ、whocaさんの部屋から持ってきたのよ おみやげに ね!」
「所長・・・・」
arieさん:「所長、何しているの?」
所長:「はい?」
arieさん:「着替えるんだから とっとと出てゆく」
所長は慌てて出て行った。
KAWAさん:「モバちゃん あんまり見ないでね」
着替えながらKAWAさんが言った
arieさん:「あんたも、とっとと出てゆく!」