伊藤探偵事務所の憂鬱 36

電話が改めて鳴った。
警察からの連絡である
テロリストが副社長他 フロアーの人間を人質に取り立てこもったとの連絡があったとの事。
こちらでは聞いていないと返事したが すでに大手マスコミには全て連絡が入っていた。勿論、外からも確認できるように ご丁寧に銃を乱射しておいてくれている。
aireさん:「もう、副社長の命が無いかも」
沈黙が支配した。
「多分無いと思います あれだけ冷静なら そんな馬鹿なことはしないでしょう 少なくとも自分の脱出が確定するまでは」
西下さん:「言ってることは正しい。しかし、もう当のご本人は脱出してるかも?」
「それでも、時間稼ぎの為に残っている人がいるって事は・・・」
とにかくその場の雰囲気を持ち直さなければ
KAWAさん:「悩んでいても仕方が無いので、行きましょ 残念ながら本人のせいなんだから 自業自得としか言えないわね」
真面目な顔で言った。
完全にお仕事モードのようだ。
arieさん:「表立っては テロなんだから あなたが相手をしてね 社長 それとこれは別に経費請求します」
社長:「解決できればな」
青さめた顔で社長は答えた。

男:「やはり、計画的にやっていますね。外部からの通信手段を遮断しているようです また、爆発物の反応があるので突入が出来ません」
KAWAさんの仲間のようだ
arieさん:「で、どうするの?」
KAWAさん:「お姉さまに教えてもらおうと思って。」
arieさん:「あら、おうちで教えてくれなかったの?」
KAWAさん:「おうちのやり方は 野蛮なんで〜 お姉さまに行儀がなってないって怒られちゃうから・・・ それに〜 モバイルちゃんに嫌われちゃうから!!」
aireさん:「そうね私たちのように上品な方法はあなた達には難しいものね!」
3人が立ち上がり 机を積んで上り始めた。
“めきめき”天井の板が引きちぎられた。
階上とはコンクリートで仕切られた天井に 西下さんが手早に穴を空け 薬品のようなものを入れている。
arieさん:「ぼうや、上の階に言って説得してきて 時間を稼いでね」
どうしましょう?
KAWAさん:「あたしも見に行く! 行きましょう」
みんながあわただしく動き出した。

KAWAさん:「お〜えかき だ〜いすき かっわいい かっわいい 扉がほ〜しい!」
事務所のある13階は社長室の上に当たる。
縁起を担いでか お客様の入れない階。機械室を兼ねているために少しうるさいので社長室とお客様を通す部屋だけは下の階にある。
だから防音のための厚いコンクリートがある。
歌いながら、KAWAさんは 口紅でドアから4Mぐらい離れた壁に ミッキーマウスの家のドアみたいな可愛いドアを書き始めた。
いつもKAWAさんがしている パステル調のピンクの口紅が一層ドアの可愛さを強調した。

ドアの絵の鍵にXの字になるように バンドエイド(青色の可愛いクマの絵がかわいいものです)を貼った。
携帯電話を首にはさんで 喋りながらそこにピアスを貼り付けた。

KAWAさん:「西下さん Chは日本の4番 十分電波は届くでしょ! 15秒後にぴっって ね!」
何かいやな予感が 胸の中に広がって 口の中に生暖かいつばが溜まってきた。
いつの間にか後ろに現れた男達に 何か渡された。
映画で見たことのある軽機関銃だった