伊藤探偵事務所の憂鬱 61

運転手:「なんだ!」
車は路側に寄せて止められた。
路側と言うと道の縁という意味ではなく、止まる所は水平なところでないと再発進出来なくなる可能性があるからである。
運転手:「うるさいな !!」
声だけなら止まらなかっただろうが 壁を蹴って壁がへこんだ所でさすがに止まった。
勿論、捕まったときには身体検査はされて武器らしきものは全て調べられた。
だが、毛皮のコートの女性に、不意を付いて押さえつけたにもかかわらずわずか一発で伸された優男。蛙の着ぐるみをきた女性 唯一の救いの軍服を着た男は目隠しをして座っているし。チェックが甘くなったのはしょうがないであろう。
ブランド靴の底の金具にまでは手が回らなかったようだ。
軍人「動くな」
軽機関銃を構えた男が人がくぐれる精一杯の小さなドアを開けた。後ろには二人の同じ銃を構えた男が並んでいる。
軍人:「靴を脱げ」
arieさん:「ぼうや、肩を借りるわよ」
座っている僕の肩に座り足を相手のほうに向かって組んでブーツを脱ぎだした。
黒い短いスリットスカートを腰の高さまで開いて組んだ足をピンと伸ばし腿から脱ぎ始めた。
ブーツの裾を少し下げて、踵を持って踵を少し抜く。
また裾を持って下げてとの作業を繰り返す。
その度に足を組んだまま膝が上下する。
arieさん:「ぼうや、最後抜いてくれる?」
伸ばした足の先に足首のところだけで引っかかっているブーツをぶらぶらさせている。
「はい」
この場の雰囲気でそうとしか言えなかった。
あたり一面が甘い香りに包まれたような雰囲気である。
こちらはともかく、相手の目は釘付けになっていた。
arieさん:「反対も?」
当たり前のようなことを聞く。
わずかに正気を取り戻した軍人が
軍人:「早く脱げ」
と 怒鳴る。
arieさん:「慌てないの」
しゃべりながら、膝を高く上げて足を組みかえる。
僕の肩に体重がかかった 何となく得した気分はしたが 状況を考えると素直に楽しめなかった。
同じようにして、反対側の靴を脱ぎ始めた。
片足にブーツ、片足にストッキング。ブーツを履いていても長さを強調される足だが 比較してみると ブーツはやはり無機質なものだと再認識される。
ストッキングは裏側に走るシームと光沢がシルク製だということを物語っているが 光がなだらかに変化する様や なにより、伸ばしているとはいえ見えているところにはシームの乱れもしわもも無い。
オーダーで作られたものとしても見事なものだ。
KAWAさん:「にゃーご」
入り口のところまで、四つんばいでarieさんを見にKAWAさんが動いた。
声を出したのは恐らく 兵隊の警戒を解くためであろうが そのまま猫のように特等席で見ている。
反対側の足も 同じようにゆっくり脱いでつま先でぶら下げて
arieさん:「どなたか取りに来て下さる?」
誘われるように軍人がこちらに歩いてきた。しかし、他の軍人が止めに入った。
軍人:「もってこい!」
arieさん:「ぼうや」
言われて僕は さっきと同様に抜き取った。
立ち上がったarieさんが左右を両手に持って入り口の方に歩き出した。
ヒールを脱いでも、かかとを浮かして歩いてる様はさすがである。
arieさん:「KAWAちゃん」
入り口近くで見ていたKAWAさんに声をかけるとKAWAさんは四つんばいのまま1〜2歩下がった。
入り口傍の壁に突進したKAWAさん。かべを蹴って一番前の軍人に飛び掛り押し倒した。
押し倒された軍人の首筋にはKAWAさんの肘が当てられていて そのままピクリともしない。
KAWAさんお蔭に隠れるように ブーツを両手で投げつけたarieさん。一人の軍人が鈍い音を頭から出している。
もう一人は、流石に避けた。
両手を 入り口の上の部分に掛けて 逆上がりの要領で雪上移動車の上に飛び乗った。
飛び乗ったaireさんに気を取られた、ブーツを避けた軍人は、猫のように地面から飛び掛ってくるKAWAさんに一撃の元に倒された。
前のほうでは、運転手の倒れる音が聞こえた。
ぬりかべさん:「あれ?、いつものやつじゃないの」
帰ってきたarieさんに聞いた
arieさん:「女の秘密は隠しとくものよ・・・・」