伊藤探偵事務所の憂鬱82

機体は平行を取り戻した。逆向きに飛ぶ木の葉のように揺れる機体を徐々出力を上げるエンジンが向きを正してゆく。
撃墜されたヘリのパイロットは考える暇も無く墜落したが もう一機のパイロットたちも大きく動揺した。
ライト兄弟が作ったライトフライヤーならともかく 第二次世界大戦のエースとも言える戦闘機が 木と竹のフレームで大半が構成されていたことなど想像もつかない。
ましてや、コンパクトで出力の小さいエンジンの熱反応が至近距離に置いても小さいこと、無線のコントロールを相手に奪われた事など ありえない謎が多すぎたのだ。
ジェットエンジンを吹かして距離を取り飛行機のように大きく傾けて旋回をした。
その時、ヘリのパイロットを新たな恐怖が襲った。
いくら装甲の硬いヘリでも、同じ箇所に集中攻撃を受けたら 全く無傷という訳にはいかない。
普段ならヘリでは行わないような 急加速、急旋回に疲労した金属が耐え切れなかった。
尾翼の一部がちぎれとんだ。
やまさん:「若造が、恐怖に負けたな・・・・」
やまさんの言うとおり 恐怖感がパイロットを襲っていた。
いま受けていない攻撃で尾翼が破損した。幽霊に 若しくは敵の秘密兵器からの攻撃? 混乱は収まらなかった。
マニュアルには・・・もちろん書いては無かった。幽霊に関しては・・しかし
ヘリは先ほどまでと違い 左右の震えを制御し切れなかったようだ。
後尾翼を失ったことで ジェットの補助がないと機体の回転を止める手段が無くなった事は事実だった。
こちらに向いていた機体がそのまま大きく旋回し飛び去っていった。
西下さん:「最後に冷静さを取り戻したようですね」
やまさん:「どういうことだ?」
西下さん:「ジェットを吹かしながらでは 帰還する燃料を残しての戦闘が不可能になってしまうんですよ。マニュアルどおり」
やまさん:「次にミサイルを撃たれていたら?」
西下さん:「そりゃー、手の打ちようが無い」
やまさん:「そいつは運が良かったな、実はこいつもな」
西下さん:「被弾したんですか?」
やまさん:「チョークを引いて強引にガスを送り込んで 焼き付いちまって富んでるのがやっとなんだ。次の指示が来たらどうしようかってびくびくモンだったぜ」
西下さん:「ポンコツですね」
やまさん:「今落ちて行ったヘリほどではないがな」
arieさん:「西下君!!」
西下さん:「はい はい 何でしょう? 私はけっこう忙しいんですが・・・」
所長:「そちらはどうなった?」
西下さん:「紙一重でしたが」
arieさん:「ここで、最も人を集めれる場所は?」
西下さん:「やはり、入り口前大聖堂」
KAWAさん:「お立ち台ある?」
西下さん:「そのまま、入り口に向かって歩いてもらったところに大聖堂を見下ろす大きいのがありますよ」
arieさん:「宮殿内の放送を空けて 無線も音声も 休戦の通達と集合を・・・・」
西下さん:「それは大変だ、ビデオの用意をしなければ」

空港には迎えがいた。
男:「おかえりなさいませ kiliko様。また、今日は若いいでたちでございますね」
kilikoさん:「つまらん話はいい、準備は出来たのか?」
男:「はい、プライベートジェットをご用意しています ただ、」
kilikoさん:「ただ?なんだ」
男:「はい、現在 相手の国との連絡が取れておりませんので 着陸できるかどうかが?」
kilikoさん:「それはいい、着く頃には全てが終わっている。それよりもこのお嬢様のお召し変えを。」
男:「はい、ご用意できております。ささ、むさくるしい所ではございますがシャワーぐらいはご用意いたしております。こちらへ」
whocaさん:「ありがとうございます。では失礼して」
whocaさんは男と一緒にどこかへ行った。
日本を出る時に神官の格好は目立ちすぎるので 目立たない服に着替えていたために着替える必要があった。
kilikoさん:「さあ、そろそろ終わった頃だな。お嬢様はうまくやったかな?」
呟くように滑走路で空を見上げて言った。
kilikoさん:「西下さん、いますか?」
無線機を持って言った。
西下さん:「西下は、現在手が離せません お暇ならもう一度掛けてくださいね」
kilikoさん:「あはは、結構苦労してるじゃないか 余裕の無いこと」
kilikoさん:「さて、俺もシャワーでも浴びてくるか、お嬢様の前に行くときは埃臭いと怒られるからな・・・・」
朝日を背に、ターミナルのほうに向けて歩き出した。