伊藤探偵事務所の爆発14

王子:「部屋の中のものは何を使っても良いのだな」
男:「王子様にはここでゆっくりしていただけるように、できる限りのものは揃えさせていただきました。 ここにあるものでしたらなんでもお使いください。」
王子:「部屋はここだけか?」
男:「基本的に危害を加えるつもりはありません、お父上次第ですが。狭いのはお許しください」
王子:「まるで、飛行機の中のようだな」
男:「我々、庶民の住まいはこの程度のものです、ご理解いただきには良い機会かと存じます」
王子:「あまり理解はしたくないが、それしか自由がないのであればやむ終えない。」
男:「流石に王位後継第一番の方ですね」
王子:「好きでなったわけではないがな・・・」
男:「好きでも成れないものがいるのですからご辛抱ください。」
王子:「寝てる間ぐらいは、一人になれるのかな?」
男:「部屋の前には待機させていただきます。御付きの女性は要し出来ませんが」
王子:「そんなものはいらん、用意しているならお前が相手をしてもらえ。」
男:「ならば結構です」
王子:「では、下がれ」
男:「いえ、私は王子の世話係ですから」
王子:「寝るから下がれといっているのだ」
男:「はい、では失礼いたします」
王子は、ベットに横になりまるで、犬を追い払うかのように手を振った。
内心はどうあれ、うやうやしい態度でお辞儀をして 部屋を出て行った。
ドアが閉まった後、少し遅れて“カチン”という音がした
王子:「鍵は外からというわけか・・・ まあ、当然か」
部屋の中を歩き回る。
ドアは当然開かない。
窓ははめ殺し。
壁を軽く叩いてみたが、コンクリートの冷たく低い音が返ってきただけだった。
コップに水を入れベットのサイドボードに置き、服を脱いでベットに横になった。
すこし考え、そして水を飲み干して布団をかぶった。
王子:「女が居ないのは我慢できるが、部屋が狭いのは我慢できないな・・」
口の中で呟いた。
寝返りをうって、布団の中で壁のほうに向かった。
先ほど飲み干したコップを壁に当て、音を聞いた。
周到に用意されている換金場所であればどうしょうも無いが、この国は彼らも勝手が違うはずだ。
さらわれて気が付いたときの日の傾きから考えても、そんなに遠くは無いはずだ。
ならば、チャンスはある・・・・
コップ越しに聞こえる音から、状況を探る。
低く続く音から、揚水ポンプのようなものがあるだろう。不定期に動くモーター音が聞こえる。
恐らくエレベーターだ、5F以上のビルの一室だと思われる。
内装は、置いてあった物から 普段から使われているもののようだ。
ビル全体が彼らの監視下にあるとは考えにくい。
ただ、脱出できないように、そして他の階に漏れないように 上層階である事は確かだろう。
上下の階はおさえられているのは間違いないだろう。
若しくは、一番上か・・・・
ヘリを使う可能性から一番上である事も考えられる・・・・
その可能性が高い。
教育された男の対応から、ただのテロリストでない事ぐらいは想像できる。
脱出の為の経路として、ヘリは用意してるだろう。
なんとなく、非完結的に聞こえる低い音から 車が時々通るような音であるような気がする。
男たちの声も聞こえる。
壁が厚いようで、話している内容までは聞き取れない。
すこし、大きな声を出した時に、幾つかの音が聞き取れる程度である。
話の感じから、男たちは3〜4人。
恐らく下の階にも別に待機しているだろう。
さて、どうするか・・・・
とりあえず、おとなしく寝る。
今行動を起こしても、相手は想定した行動をとるだろう。
拘束するものと、拘束されるもの 緊張感が違う。
恐らく、王子を捕まえてまでの要求であれば 即日に払えるお金や内容でない事は間違いない・・・・。恐らく2〜3日の命は保証される。
ならば、寝るしかない。
そして、寝るのも義務だと自分に言い聞かせて眠りについた。
明日には、又新しい展開があるだろう。
自力で脱出しなければ・・・・