伊藤探偵事務所の憂鬱 21

話の内容はともかく お替りのケーキのワゴンがやってきたこと 警備担当者がやってきたこと そして何よりも ケーキのワゴンの到着で始まった KAWAさんとぬりかべさんの狂乱がまねく観客に話の内容を聞かせるわけにはいかない副社長の退場で 一旦 幕が下りた。
「ボーヤのお陰で早く幕が下りて助かったわ。 出るわよ みんな」

「ふあーい」
ぬりかべさんとKAWAさんの口にはケーキを頬張ったまま同時に返事をした。
だんだん、KAWAさんのイメージが崩れてゆく
口の中一杯のケーキを飲み込んだKAWAさんが
「残りは お土産にしてください 今夜 お茶と一緒に頂きますので」
周りの人が見たら ピザのラージか寿司のファミリーセットを頼んだとしか思えない大きな包みが用意され KAWAさんの後ろにぬりかべさんがつき従う姿で店を出た。

出たところで 西下さんと合流した。
「社長との契約は完了しました。発見は明後日 と二日の猶予をもらっています。」
西下さんはarieさんに向かって言った。
「二日以内に ごたごたを片付けないと駄目ってことね」
arieさん
「それに、所長ももうそろそろ持たないでしょうから 今ごろきっと恨まれてますよ」
嬉しそうに西下さん。
「あと、契約書のコピーは?」
arieさん
「勿論ここに・・・」
小さな封筒に入った書類が一通
「副所長様、“や”のつく方たちの対応がお得意みたいなのでお使いお願いできます?」
意地悪そうなarieさんの笑顔
「あたしも かっこいいとこみたーい」
腕に抱きつきながら KAWAさん
「もし、私が行く前に クリーム一切れでも減ってたら死ぬわよ」
KAWAさんの 普段見せない表情がぬりかべさんに向けられた。正確には向けられたようだ こちらからは見えないのですが どすの利いた声と いつもニコニコしているぬりかべさんの表情がこわばっていたからである。

「レッツ・ゴー」
KAWAさんの掛け声でみんなが動き出した。
ぼくはしぶしぶ恐怖の自由業の方への お宅訪問をした。
今回は前回の話が通っていたので 名前を出すだけで奥まで通された。ただ、歓迎されざる客だと言うことは 部屋の4隅に座っている今にも飛び掛ってきそうな男達の表情が物語っていた。
「いらっしゃいませ、今日はどういったご用件で」
前回も出てきた 若頭が対応に出てきた。
「これを、親分にお願いします」
西下さんに貰った契約書を手渡した では、それだけですので失礼します」
できるだけ早くに ここから失礼したかったので手渡して帰ろうとしたのですが 当然呼び止められた。
「ここでお返ししましたら 私は指を詰めなければなりません。親分に目通しするまでお待ちいただけないでしょうか?」
勿論 周りの視線がきつくなったのはいうまでも無い もちろん気の弱い僕には断れないことはあたりまえの事実だった。
「親分に、すぐにもお話しますので少しだけお待ちください」
若頭が席を外したと同時に 部屋の中に料理が運ばれてきた。
座敷なので一つづつお膳に乗った 和食であった。
「きゃー、おっいしそう」
さっきケーキを 少なくとも1ダースは平らげたとは思えない女の子の台詞である
「和食ってすっごく素敵、だって カロリーが少ないし繊維質が多いから美容とダイエットに最適なんだよー!!」
さっきのケーキはどうなんだ!! と 口から出そうに成ったが 周りの雰囲気はいえる状態では無かった。と、言うよりは KAWAさんは良くこの状態でしゃべれるなと感心する。
「おっいしー この料理」
僕は 残念ながら味が解らない
「おっ さっ けー も く〜ださいな」
だんだん、KAWAさんのテンションが上がってきた。
勿論、周りの怒りのボルテージも上がってきた。
やけになって一緒に飲み始めてしまった。