伊藤探偵事務所の憂鬱 58


空に大きな物体が飛んだ。空高く飛ぶ黒い影。
危ない 体中の警報が成った。
不思議なもので KAWAさんのほうに 反射的にしゃがみこんでナイフを構えた
後で考えると不思議なんだが、銃ではなくナイフを構えるのは絶対的な経験不足から来るものだろうか それとも、反射的に起きるものであろうか。
空飛ぶ黒い影は人間だった、それも 明らかに戦いを目的とした格好をした・・・・

空飛ぶ影:「ぐぁ」
恐ろしい掛け声と共に空を飛ぶ男たち。
反射的にそちらの方に体を向けて、KAWAさんの方向にぎりぎりまで下がった。
凍った川の方に向かって飛んでいく。
その先の攻撃が予測できない。
勿論、立って歩いてきても予想できるわけではないのだが 恐怖心だけが先に走った。
“ぐわっしゃ”
黒い物体は凍った川を突き破って着地した。
氷の割れた川には 割れたところから水か飛び込んだ男に向かってしぶきを上げる。
そして、
男はそのまま川の中にたおれていて動かなかった。
突然
「動くな」
押し殺すような声で、背中に何かが突きつけられた。
冷たいものが走る。
ぬりかべさん:「ばー」
男の飛んできた方向の雪の壁からぬりかべさんが出てきた。
arieさん:「あははは、ぼうやおしっこちびらなかった?」
喋りながら、KAWAさんの体を確認している。
口が利けなくなっていたので声が出ないまでも KAWAさんを指差して唸った。
着ぐるみを丁寧に脱がせてゆくと KAWAさんの肌が現れた。
右側の腰の上辺りに赤黒い斑点が出来ていて 大きなものは30c以上のサイズがある。
完全に真中の部分は大きく膨れていてうっ血しているようだ。
arieさん:「さすがに2億円」
ぬりかべさん:「口径20mm以上、機関砲並か 良く死んでいない」
口に吸入器のようなものを取り付け 長い針を背中につき立てた。
開けられた穴から 血が噴出した。
「arieさん 血が」
ようやく声が出るようになった。
arieさん:「血が出たぐらいで驚かない。血が出るって事は生きているのよ」
血を抜いて何かの注射をするとKAWさんの顔色が見る見る良くなった。
arieさん:「もう大丈夫よ」
ぬりかべさん:「どうします・ 行きます? 留まります? それとも・・」
arieさん:「この状況じゃあ、第3の選択って事?」
「どうするんですか?」
arieさん:「坊やの 実力にかかってるわね 頑張ってね」
段々、気持ちが落ち着いてきた。
KAWAさんが大丈夫だということ、何よりもarieさんやぬりかべさんが一緒にいるって事が 僕を安心させる。
そういえば、
「ぬりかべさん 荷物は?」
ぬりかべさん:「救出優先 後で取りに行くよ」
もちろん、お陰で助かったんだが、安心したらおなかが空いてきたので心配になった。
西下さん:「どうやらうまく合流できたようですね」
arieさん:「うまくいったかどうかは別として」
西下さん:「まあ、結果オーライということで」
「オーライなんですか?」
aireさん:「誰か死んだ?」
「いいえ」
聞いた僕が馬鹿だった
西下さん:「では、又夜に」
arieさん:「シナリオ3だからチャンネル変えてね」
西下さん:「了解」

KAWAさん「うっ う〜ん」
KAWAさんの気が付いた。
「KAWAさん、大丈夫ですか?」
KAWAさん:「お姉さまのお陰みたいですね。有難うございます」
arieさん:「お姉さまは おやめって言わなかったかしら」
KAWAさん:「モバちゃん、ちょっと」
KAWAさんが僕を呼び寄せた。
KAWAさん:「動けないと思って、ス・ケ・ベ!!」
KAWAさんは下着も外して 背中を剥き出しにした格好だった」