伊藤探偵事務所の混乱 5

KAWAさん:「これどこで買ったの?」
どきっとした・・・まさか露天で買ったとも言えないし・・・
「えーっと、事務所の近くのブティックで、きっと似合うと思ったから・・」
KAWAさん:「嘘でしょ? 本当はどこで買ったの?」
見透かされている・・・怒っているわけでも無さそうだから正直に言おう。
きっと、ケーキ食べ放題ぐらいで許してくれるでしょう。
「実は・・・ 通り道にあった外国人がやってる露店で・・・」
すまなさそうに言った。
KAWAさん:「ほんと?」
信じられないという顔でKAWAさんが言った。
「はい、神に誓って」
神様なんて信じないけど 口を付いて出てしまうのはこの間の影響かしら?
KAWAさん:「信じられない・・・、今日だけセレブな気分を味あわせてもらうわ。スカーフに合う服を買いに行きましょ。勿論おごりで」
「はい、お嬢様の言うとおりに」
白状させられたのでしょうがないだろうと思ったが、お食事代に不安が残った。
KAWAさん:「これって本当はいくらぐらいだと思う?」
KAWAさんがうれしそうに聞いた。
「さー、実は1000円で買ったんですよ」
KAWAさん:「すぐにお金にするんだったら 1億円ぐらいかしら」
「へっ?」
信じられない金額をKAWAさんが言った。
「そんなにするわけ無いじゃないですか、こんなスカーフ一枚で」
KAWAさん:「これって詳しく調べてみないと判らないけど すっごく古いものだよ。書いてある字だって 中国古代文字だし どう見てもシルクだし。 あたしが見たことあるのはそれぐらいの値段だったわよ。」
「そんなわけ無いでしょ・・・」
KAWAさん:「いいわよ、今日だけ楽しんでも きっとレプリカでも数百万はするわよ だからその分今日は おごってね」
「今持っているお金で足りるかな? ボーナス貰っちゃったんだ」
うれしかったので、KAWAさんに通帳を見せた。
KAWAさん:「この通帳・・・それにこの金額・・・すごいわね 何盗んできたの貴方のところの所長は」
「そうでしょ、100万円もくれたんですから 銀行へ行ってもお金を下ろすだけなのに別室に案内されました。初めての経験でした」
KAWAさん:「そりゃーそうでしょう。100万円じゃなくて 100万ドルなんだから・・・」
「100万ドルって・・・ 本当だ!! ところで 100万ドルって、いくらですか?」
KAWAさん:「いまのレートで・・・ 1億800万円ぐらいかな?」
「1億って・・・・銀行で全額下ろすって言っちゃいました」
KAWAさん:「そりゃー、別室に通してもらえるでしょうね で、どうなったの?」
「お買い物はカードでどうぞって、現金20万円ぐらいと クレジットカードをその場でくれました」
KAWAさん:「そりゃあ、支店長慌てたでしょうね」
KAWAさんは、歩きながら腹を抱えて笑っていた。
KAWAさん:「おっかねもち〜」
「からかわないでください 知らなかったんですから」
KAWAさん:「それどころか、この通帳減ってないでしょ」
「そうですね 20万円下ろしたはずなんですけど」
KAWAさん:「この通帳の金額は 一回で下ろせる金額が書いてあるだけ 実際のお金はどこか別の銀行に預けてあって信用保証されているから もっとあるはずよ」
「って、いくらぐらいですかね」
KAWAさん:「信用保証するぐらいだから 10倍以上かしら?」
「・・・・」 声を失った。
KAWAさん:「今日はなんでもおごってくれる?」
「この通帳が本当だったら いいですよ」
KAWAさん:「じゃープリティウーマンごっこ はじめっ!!」
KAWAさんは喜んでいるけど、あまりにも突然の話で驚いている。
というか想像が付かない。
3億円は宝くじの当たり総額、サラリーマンの生涯賃金が2億円 僕の通帳には1億円。
もっとあるって言われても、考えることも出来なかった。
逆に言えば、このまま逃げても一生遊んで暮らせるかもって考えが頭をよぎって 何度も通帳の金額を確認した。
KAWAさんは、まるでおもちゃ屋の前までやってきた子供のように 先にたって百貨店にまっしぐらに向かっている。
僕は、その子供の保護者のようにうしろをぶつぶつ言いながら付いていった。
KAWAさん:「そうだ、カード見せて」
さっき貰ったクレジットカードを見せた。
KAWAさん:「枠は1000万円 事実上無制限ね!!」
KAWAさんの目が怪しく光った。