伊藤探偵事務所の混乱 34

意外な返事だったのか、老婆からのプレッシャーが一瞬消えた。
そして、元気ではないが老婆から笑いが聞こえた。
老:「そうか、彼女へのプレゼントか・・・・ で、彼女とはうまく行ったかね?」
どう回答していいかは解らなかった。
「少なくとも、一緒にここまで来れました」
老:「どうしたい? 例えば世界中の美女をここに集めて跪かせることも可能だと言ったら?」
余計に意味が解らない質問である。
まるで、禅問答のようだ。
「さあ、もしそうなっても何も出来ないと思います」
老:「そうか」
やはり嬉しそうである。
老:「あのスカーフに選ばれたんじゃな」
「いえ、僕が選んだんですが」
老:「さもありなん」
頭が混乱してきそうだ、何も意味を成さない質問のようだが何故か老婆は嬉しそうに納得している。
老:「で、arieの言うようにこれの前の持ち主を知りたいか?」
「僕にはわかりません。でも、このスカーフに導かれているようには感じます」
老:「そうじゃな、それが運命と言うものじゃよ」
老婆は手を叩いた。
さっき案内してくれた男がやってきた。
老:「呼び出して悪かった。明日には案内を付ける。今日はゆっくり楽しんでおくれ」
男が、又 無口に案内を始めた。
勿論、逆らう気も無く案内に従った。
広間があったんだと、感心しきりの僕に 座ったメンバーが目に入った。
所長:「お疲れさん」
緩やかな笑顔で聞いた。
erieriさん:「いけ好かないばあさんだったでしょ」
嘲笑するような笑い
ぬりかべさん:「・・・」
目を見ながら頷いた。
arieさん:「楽しい、おばあさんでしょ」
KAWAさん:「いたい事されなかった?」
矢継ぎ早に聞かれて返事に困った。
「まあ、それなりに」
どれに返事していいか解らなくて変な返事をした。
だが、誰一人僕の返事を聞いていないようで返事に対する答えは無かった。
ただ、erieriさんには、魔和永住から冷たい視線が集中した。
取り合えず、KAWAさんの隣に座ってご飯を食べた。
今日はもう移動が無いだろうと思うと、思う存分ご飯が食べれそうだ。
料理は基本的に変わらない、羊の肉だ。
それでも、いつもに比べて量が多い事が歓迎してくれている事を表しているのだろう。
ただの、焼いた肉を口に入れた瞬間、舌の付け根に暖かい何かがくっ付けられたかのように 口の中に唾液で一杯になった。
「おいしい」
横を向いてKAWAさんに同意を求めようと口を空けて声を出そうとしたら、口からよだれがこぼれた。
袖でぬぐって、もう一度KAWAさんのほうを向いたら KAWAさんの目は獣の目になっていた。
手も出せずに、もう一度、肉を口の中にほうばった。
「おいしい」
あごの辺りが緩むのが自分でもわかる。
「本当においしい」
arieさん:「おいしいでしょ、特に今日のは超一級ね。気に入られたみたいね」
やさしい目のarieさんだった。
KAWAさんが首を傾げ、僕の肉を一切れ食べた。
KAWAさん:「いっただき〜」
僕の肉を取ってKAWAさんは食べた。
KAWAさんの表情が変わった。
KAWAさん:「ずっるーい」
「ごほっ」
KAWAさんい背中を叩かれた。結構容赦の無い力で息が瞬間止まった。
老:「お嬢ちゃん、彼は特別なんじゃよ」
老婆が、部屋に入ってきた。
手には、あのスカーフを持って。
arieさん:「そんなに起きてらして大丈夫ですか?」
老:「お前から、そんな神妙な言葉を聞かせてもらうのは以外じゃったな」
arieさん:「からかわないで下さい」
arieさんが珍しく、言い負かされた。