伊藤探偵事務所の混乱 37

老:「そしてもう一つは、その御印への義理かのう?」
「このスカーフですか?」
老:「我々は、それを守る義務がある。そして、正しい方向に導く義務もある」
「そもそも、あれは何なんですか?」
老:「その問いに答えるのは難しい。じゃが、人によっては “王の印”と呼んでおる。私流には、ただの塵箱の地図じゃがな」
「“王の印”ですか、そういえば最近そんなものもありましたね・・・ははは」
arieさん:「あれは、一国の王。これは、世界の王」
半ば、冗談半分に言った言葉をarieさんに真剣な表情で言い返された。
老:「世界の王などおらぬよ」
所長:「大きく出たね、arieくん」
老:「まあ、世界を滅ぼすぐらいのことは出来ると思うがの」
「世界をほろぼす? どうやって?」
arieさん:「地球を二つに割ればいいの。論理的には可能よ」
「そんな簡単に」
arieさん:「あとは、どこかの国に富を集中させて、経済的にパンクさせる手もあるわね」
老:「そんなことは出来んて、少なくともわしの眼の黒いうちは」
所長:「それがあの地図に書いてあるって訳ですね。もちろん、arie君の目的は別のようだが」
arieさん:「世界を征服することに興味は無いわ、世界を征服した男になら興味はあるけど」
所長:「こりゃー、副所長じゃなくて 王様とお呼びしなきゃいけないかもね」
副所長?? 僕のことだ。
「なんで、僕なんですか?」
老:「お前が、選んだんじゃろうが」
「いえ、もうKAWAさんが・・・」
老:「さっきの事を忘れたか? 彼女はお前に託したのじゃ」
arieさん:「老、さっきの話はどうだったの?」
老:「今は、合格じゃの。しかし、面白い奴を連れてきたなarie」
arieさん:「ただの、天然ボケよ」
老:「そうか、天然ボケはよかったの」
顔の形を崩して笑った。
老:「お前が、この御印の所有者じゃ。そして、わしが認めた。お前の望みは何でもかなえよう どうする?」
「どうするって・・・」
老:「まあ、急がん。この老の命のあるうちに決めてくれれば良い」
そのまま、老婆は奥に帰っていった。
所長:「偉くなって 僕はうれしい」
arieさん:「器はともかく箔は付いたわね」
「からかわないでください!!」
KAWAさん:「さすがー」
「そうだ、KAWAさん知ってたんですか?」
KAWAさん:「うんん、全然」
口の中で食べ物をもぐもぐしながら答えた。
シェンさん:「私なら怖くて食べられませんですけどね」
arieさん:「普通ならね」
所長:「僕なら食べるけど」
arieさん:「限定、人間に限る」
「僕は人間じゃあないんですか?」
arieさん:「所長と一緒なだけよ」
ぬりかべさん:「じゃあ、駄目だね」
KAWAさん:「なんまいだ」
立て続けにみんなから冗談がマシンガンのように出てくる。
長い緊張感に耐えられなかった・・・・つまりいつものメンバーだった。
arieさん:「で、どうしたいの?」
「arieさんは何が望みですか?」
arieさん:「どういう意味?」
「何か目的があって、老さんに何かを頼んでるんでしょ?」
所長:「じゃあ、あれか」
「世界征服でも、世界の滅亡でも無さそうだし」
arieさん:「そんなちんけな者は望まないわ」
KAWAさん:「じゃあ、彼氏とか・・・・」
arieさん:「私は落ちてもこんなのには手を出さないわよ」
「こんなのって・・・」
KAWAさん「あー、よしよし モバちゃんかわいそうにねー」
KAWAさんが頭を撫でながら僕に言った。
arieさん:「とにかく、ここから先は貴方が一人で決める事。誰も助けてくれなし 望んでもそれを手に入れられない人もいる。十分に考えなさい」
僕の望みは・・・・・