Miss Lは、ローズバスが大好き 22

凄く違和感を覚えたのは、小柳刑事のむせた事。
確かに溶ける様子すら感じさせないほど注がれた塩の入ったお茶を一気に流し込んだわけだから、むせるのはしょうがない事なのですが、口からお茶とも泡とも 涎とも付かない液体を吐き出したのを見ていて なんだか大きな違和感を覚えた。
Mr.G:「どうかしましたか? Miss.L」
Mr.Gか聞いた、流石にかなり鋭い。
「なにか、あの怪物に違和感を覚えるんです どこか無駄があるって言うか生物らしいって言うか・・・」
Mr.G:「じゃあ、あれは生き物でしょうか?」
「いえ、この間の説明が正しいような気がするんですけど そうじゃなくってそうやって作られたものにしては無駄があるって言うか」
何をどういって良いか解らないけど、感じる事をそのままぶつけてみた。
「例えば、私の手が口の中に入ったときに涎みたいなものがついたじゃないですか。本当に消化器官が無ければああいうものが必要じゃないですよね」
しばらく、Mr.Gは考え込んでいる。なにかおかしい事を言ったのかしら。
Mr.G:「面白い考え方ですよね。でも、今の説明じゃあ十分じゃあないようですよね 何をベースに作ったとしても 口には唾が溜まっているでしょう。口の中の組織がその条件でなければ生存できない細胞であれば、それは必要なものだったとも考えられますよね」
そうか、必ずしも食べるためだけに必要だとは限らないんだ。例えば、口から下は食道と大腸が繋がるような構造だったとしてもいいんだから必ずしも必要ではなかったかもしれない。
「でも、でも 羽根とかはどうですか必ずしもたためる構造である必要は無いですよね」
Mr.G:「羽根に関しても、それを折りたためないと回収した後に運ぶのに必要なのかもしれないよ」
う〜ん、
私が考えているところに大きな声が聞えた。
小柳刑事:「じゃあ、大きな車は無いかもしれないんですね!!」
Mr.G:「大きな声でなくても聞えるから もう少し小さな声でお願いできますか?」
小柳刑事:「すいません、そんな事よりどれぐらいの大きさですかね? 普通乗用車だったら大丈夫なぐらいとか・・・」
「いえ、もっと軽いと思いますよ」
小柳刑事:「それはどれぐらいって事ですか?」
私のほうと、Mr.Gの間を行ったり来たりしながら小柳刑事が聞いた。
いま洗面所で、口の中を濯いできたようで 鼻のしたまで水でぬれて 首を振り回すたびに水滴が飛ぶ。
「私が腕を振り回したら、それでひっくり返ったぐらいですから重くても子供ぐらいかな?って」
Mr.G:「恐らく暴れなければ小型犬のケージぐらい 重さは15Kg程度が限界じゃないかな?空を自由に飛べるレベルであれば。」
珍しくMr.Gがしっかり問いどおりの回答を返した。
Mr.G:「それ以外にも、あの姿は伝説の怪物とかに真似たものかもしれないから 畳める事自身はおかしくないんじゃないかな?」
割と意地悪く、考え込んでいる私の疑問に質問をかぶせてきた。
でも、かぶせられたお陰でその回答が答えやすくなった。
「先生、ハリーポッターの怪物 耳は長かったですか?短かったですか?」
Mr.G:「小柳刑事、どうでした?」
小柳刑事:「そんなものは見る暇も無いですから解りません」
Mr.G:「だそうですよ、Miss.L」
恐らくMr.Gは覚えていたから 小柳刑事に言ったのであろう。でもお陰で話が続けやすくなった。
「想像上の怪物って、あくまでも想像上の産物で絵によって違ったりするんですよね。だから 別に畳める羽根であっても無くても大きな問題じゃあないんですよね」
Mr.G:「じゃあ、後運ぶための努力はどうかな?」
それなんですよね、それは畳めないと困ってしまうんですよね・・・
「それって、運ばないと駄目ですか?」
Mr.G:「それは良いんだけど、じゃあ事件の後どうやって逃げたんだろうね?」
「やっぱり、羽根の問題はともかく形に無駄がありますよ あんな格好をしている必要は無いでしょう。耳だっているとは思えないし・・・・そうか、やっぱりあれは伝説の生物を真似て作ってあるんですよね」
思わず手を叩いて納得した。思わず手を叩いた辺りで自分の年を感じてしまう。
小柳刑事:「伝説の生物を真似て作ってあるって事は、人が作ったって事ですか?」
Mr.G:「伝説の生物がいて、それを見た人が書いたのがこんな絵かも知れないですよね」
指差したのは、部屋中に散らばった怪物の絵と本。
「それは、先生流に言うと推理じゃないってやつでしょ。生物として存在する以上ネッシーみたいに1匹で何百年も生き残るっておかしいですよね。じゃああれもたった一匹でいたなんて思えないですね。ましてやあんな体 あのサイズで空を飛ぶんだから体の中に蓄積されるエネルギーは殆ど無くて、かなり高カロリーな物を食べる必要があるでしょう。とても 自然界では生きていけませんって!」
一気に思ったことを喋りきった。
Mr.G:「小柳刑事、今日のところは私の出番は無かったのですがこんな感じでいかがですか?」