Miss Lは、ローズバスが大好き 36

亜矢子警視:「で、何をすればいいの?」
Mr.G:「どんなのがお好みですか?」
亜矢子警視:「きわめて平和的で、誰も断れないほど効果的なやつ。どうしても駄目だったら どんなに平和的でなくても効果的なやつ。」
話が後になるほど、悪魔的な笑いがこぼれていた。
Mr.G:「そんなにたいした事は出来ません。ちょっとした不正を暴く振りをしてくだされば」
亜矢子警視:「あら、暴いちゃ駄目なの?」
Mr.G:「皇居の下まで掘り進むと都合の悪いものが出てくるかもしれませんから」
「皇居の下には何かあるんですか?」
Mr.G:「便宜上、天皇の安全の為に何も無い事になっています。でも、それ故に隠したいものが埋まっているかもしれませんよ」
亜矢子警視:「何にも無いわよ、政府の秘密機関と海外の秘密機関の出張所以外は」
「まさか?」
亜矢子警視:「世界中探しても、どこよりも強固な警備を行う王室が皇居なのよ。テロも何も無い国とは思えないほど。何も無いと考えるほうが おめでたいと思わない?」
小柳刑事:「警視、それぐらいになさったほうが」
Mr.G:「まあ、それは置いといて 予算が無いから工事が遅々として進まない地下鉄工事があるのはご存知ですか?」
亜矢子警視:「都知事の無駄遣いね、水が出たとかいって掘っているのか埋めているのかわかりゃしない。もっとも、海沿いの浅いところに地下鉄作るぐらいならそのまま高架にすればいいのに。利権が絡んでいるとお金のかかる工事しか選べないのね」
Mr.G:「本当に遅れている理由がそれで、地下を進んでいる理由もそれだったら委員ですけどね。」
亜矢子警視:「で、どうやって因縁つけるの?」
Mr.G:「あなたが痴漢にあうって言うのはどうですか?」
小柳刑事:「まさかっ、地球上にそんな度胸のある男が?!」
言っておいてあわてて口を塞いだ。
亜矢子警視:「いないんなら とっととあなたが成りなさい!!」
警視は自分より背の高い小柳刑事の背中に飛びついて、肘で小柳刑事の頭をゴリゴリと押さえつけた。
「あっ、あっ」
乗られた小柳刑事が、耐え切れずそのまま床に倒れた。もちろん、警視は倒れきる前に小柳刑事の背中を踏み台にして飛びのいた。
亜矢子警視:「軟弱者! か弱い女性一人支えられなくて日本の平和が守れると思っているの?」
小柳刑事:「はい、すいません」
小柳刑事は答えたものの、起き上がる気配は無かった。
「大丈夫ですか?」
小柳刑事:「はい、すいません。すぐに起きますから。」
Mr.G:「地下鉄が途中まで出来ているので走っているのですが 完成しないとひとっこ一人いない荒野にぽつんと駅がありますから そこで痴漢に会ったりしませんか?」
「そんなところに何で地下鉄が走っているんですか?」
Mr.G:「いつ出来ても大丈夫なように予行練習」
「いつ出来るかわからないんですよね? 出来上がることが決まってからでも遅くないんじゃないですか?」
Mr.G:「そうですね、何で走っているんでしょうね?」
亜矢子警視:「その化け物って言うのは、科学の産物? それとも、オカルトの産物?」
突然 警視の話の内容が変わった。
小柳刑事:「確かに生物でした。機械ではなかったと思います」
「そうですね、口の中にはどろどろのよだれが垂れていましたから」
思い出してもぞっとする。
亜矢子警視:「少なくても想像上の生物では無さそうなのね」
小柳刑事が自分の体の包帯を指差した。
小柳刑事:「自分の体に傷をつけて楽しむ趣味はありませんから」
亜矢子警視:「そうなの?」
警視は私のほうを向いて聞いた。
すぐには何を言っているか判らなかったけど 数秒後に判った。
「何を言っているんですか!!」と言い返すところを小柳刑事に先を越された。
赤い顔をして怒る小柳刑事。
小柳刑事:「馬鹿な事を言わないでください。Miss.Lに失礼でしょ」
言い返されて少しむっとした表情を顔に出した警視だったがすぐに笑顔を取り戻した。
亜矢子警視:「じゃあ、ご飯は食べてそうね その化け物」
Mr.G:「ご飯だけでは済まなさそうな気がするんですけどね。」
「あっ、あの生物は不自然だって言っていましたよね、もし内臓が詰まっていたら飛べないかもしれないって。」
亜矢子警視:「なるほど、地下鉄は動いていないと不自然なのね」
一人納得したのか腕を組んで考え込み始めた。
ふと、顔を上げて言った。
亜矢子警視:「え〜っと、Miss.Lだったっけ? 申し訳ないですけどお茶をもう一杯いただける? ラム酒のたっぷりなやつ」