伊藤探偵事務所の爆発38

かの王国は、アラブの国の中では珍しく全くといって石油の出ない国。
激動の変革に取り残されながらも、その裕福な水資源のお陰で生き残ってきた国。
過去にはそのお陰でアラブの要となるものの、現在ではその地位はすでにない。
おかげさまの前国王の善政で、その政策は混乱するアラブの国々に干渉する欧州、北米各国に対する支援を中心とした 極めて奇妙な政策で その主権を守りつづけた。
故に、決して裕福ではないがその国としての体裁を保っている。
勿論、何処にでもある資源としての資源はこの国にもあり 水が豊富で欧州に遠くない地理的な優位で今では主要産業に半導体の生産を持っている。
測らずもがな、慎重な王国の姿勢はその政策にもでて、メモリーチップの生産だけに特化したプランドではなく、セカンドラインとしての政策がメモリー価格の度重なる暴落の影響も受けにくいものとしたようだ。
今でこそ追いつかれようとしているが、それも少しの間がある。
いま、それに対する対策として大規模な設備投資を行うか、それとも、この施設の変更で対応するかについては大いに議論の種となるところである。
一企業のこうどうであれば問題の無い事であるが、その運営が一国家の運営レベルにまで来ていると いわゆる議会での最も大きな議題がその方針である事は間違いない。
その問題が、国家を揺るがす対立の種になることまでは予想の範囲を越えていた。
その対立が、事件のきっかけであることは予想するのに難しくない。
もちろん、国会での対立が 直接クーデターの原因になることは少ないのであるがこの国の存在自身が邪魔に思っている国や、新規の施設の導入に関する利権がそれを後押ししている。
利権問題は、あくまでも表面的な問題に過ぎない。
人を動かす動機としては、小さな問題ではない。
しかし、それ以外の事象に関しては そんな簡単に行く話ではない。
国と国の間で行われた約束事は、決して踏み倒す事の出来ない約束で公的にそれを踏み倒すための方法は限られてくる。
少なくとも、自立していない国に対しては経済問題を兼ね合わせた 条約の改定という方法がある。
しかし、この方法の欠点は 相手が自立できている国に対しては使えないこと。そして、一気に変更する事など つまりいきなり条件を大きく悪くする事など出来ないので何年にも渡る時間がかかる事である。
もちろん、現在 この国はおかげさまで自立しているのでその方法が使えない。
そしてもう一つの方法、これは最も簡単に約束を踏み倒す方法。
国ごと転覆させる方法である。
もちろん、表立って行う事などは出来ない方法である。
過去の経緯で、永久としか思えない共存、自立関係を約束している国々が現在の状況から脱却したいのが目的だった。
乱れるアラブの政治情勢。そのなかで国政が安定して食料が供給でき、宗教的問題の起きない場所にベースを置きたいと考えた時に最適な国である事は確かであるから。
クーデターは起こす事に大きなメリットがある。
後先を考えない、政権転覆派は 転覆に重きを置きその後のことまで考えていない事が多く これまで成功した事例が少ない。
そして、そこに付け込む政治介入の利点がある。
決して、先の事を考えてないわけではなく政権転覆の功労者が国の主要に付く事が多く また、その約束があるから働く場合が多い。その場合、軍人の治世能力が優れている場合が多くなく、今の安定した状況をひっくり返すぐらいの人だから安定した治世に対する造詣が深いはずは無かろう。
もちろん例外はあり、あまりにも現状が悪い場合のクーデターは その志が治世に向いているばあいがあるのでその場合はその礼に沿わない。
また、失敗しても、同じ国の中で起きる戦争である。
功労者は存在せず、国は荒れ 与える褒賞も無ければ 王の権威は失墜する。
何一つ、起きるだけでよい事は無い。
だから、今回は何が何でも発生させる隙を作りたくないと言うのが本音である。
また、後継者の問題もそうで 国の安定を図るためには 明確な後継者がいることが大事で、多すぎても少なすぎても国に不安感が高まるものである。
だから、どの国においても王子のスキャンダルを嫌い ひた隠しにしようとするしあちこちの国に留学させてその国からの評判を消してしまう事が多い。
また、複数の後継者候補がいて その第一後継者がぼんくらだと 国を二つに割って揉める事になる。
これは、自分の国を守る行為だからしょうがない。
故に、優秀で一人しかいない後継者は 大事に守らなければいけない。
特に、暗殺なんかが行われると 国の侵略の可能性を考えさせるからもってのほかである。
それが故に今回の事件が起きた。
だが、クーデターの首謀者を一方的に弾劾する事も、物理的に難しく 相手にも国家のためを考えての行動であることを旗印に行っているわけである。
そんな事になれば、国の政治自身の権威が低下する。
今回、もしクーデターの危機が去っても、それで全て終わるわけではない。
それが、今回の問題の解決を難しくし、同士tも対応が後手後手に廻る理由である。
つまり、問題はきわめて難しく、そして 相手の出方私財で打つ手を変えなければいけなく 全てが闇の世界で解決しなければいけない 難しい側面を持っていることがわかった。