Miss Lは、ローズバスが大好き 8

「じゃあ、この間のは何ですか? 褒められた頭で考えても解らないんですけど」
ついでにというか、ずっと引っかかっていた事を聞いてみた。
変な話ですけど、なかなか聞くチャンスが無い。というより 聞くタイミングがつかめない。
起きた事態は事実だという事は 私の体が憶えている。しかし、実際には信じてもらえるとは思えないから。流石に、あんな突拍子もない格好をして帰ってくれば何かあったとは思ってくれているみたいだけど、説明した事自身信じてもらえていないだろうし 変な事を言っていると思っているだろう。妙に優しいのもそのせいかもと・・・
MR.G:「その事については、やはりまず謝らなければなりません」
MR.Gの話が続いた。
Mr.G:「まず、あれが解らなかったのはしょうがないでしょう、人知を超えるものであれば人の知恵では追いきれません。逆に貴方が大きな怪我もされずに帰ってきたこと自身を喜ばしいと思っています。」
「えっ、信じてくれるんですか?」
まさか信じているとは思わなかった。
Mr.G:「貴方が嘘をつくかただとは思ってはいませんよ。そんな大事な事で」
Mr.Gは又、珍しく立ち上がって一冊のファイルを取り出した。
中には神話の世界に住むような たくさんの動物達のイラストが書いてあった。
そのいくつかに緑色の付箋がはられてあり。そのうちの一つをめくって見せてくれた。
Mr.G:「貴方の見たのは、お話からするとこんな格好のものですよね」
そこには黒い体をした小さな悪魔のような動物が描かれていた。
下腹の大きく出張った黒い胴体に 不釣合いな線の細い肩口。
細い腕には尖った爪のついた腕が付いていた。物を握るのには適していないが 何かを引き裂くのに便利そうな爪だ。
足も、歩くためというよりは鷹の足のように爪が地面を捕まえている姿がある。
そして歩けない足を補うかのように体の3倍もあろうかという翼が付いている。鳥のものというよりも蝙蝠のものに近いその羽根にも何箇所か爪が生えている。
首は長いようだが、不思議な接続で繋がれているようで細いながらも上下に不気味に動く。
口は言葉どおり耳まで裂けているが、その耳も頭の上まで避けられている。
口の端には、牙が見え隠れしだらしない唇の筋肉が ぴくぴく動きながら弛んでいて 涎がそこから糸を引いて垂れている。
思い出しただけで、背筋から血が引いていった。
Mr.G:「すいません、思い出させてしまったようで」
顔色に出ていたようで、Mr.Gが私に向かって謝った。
「いえ、それよりもあれは何ですか?」
Mr.G:「あれは、想像上の生物です。ですから実在しないはずの生き物なんです。ですが 現実に見られたのですよね・・・・・・・正直解りません。」
「そうですよね・・・」
Mr.Gをなじったり 怒ったりしたが そんな事までMr.Gだとしても知るはずはない。
Mr.G:「しかし、想像は付きます。そう言った生物をどこかから呼び出したか 若しくは誰かが作った事を。それを調べたいと思っていたのですが、ご迷惑をおかけしました。軽率でした。」
“ピンポン”
空気が重くなる間もなく、軽やかな音が響いた。
はっと我に返って、インターホンに向かって返事をした。
先ほど頼んだ出前が届いた。
月々で請求が来るようでお金を回収もせずに出前の人は帰っていった。
ラーメンと天心飯は、ごま油のいい匂いを部屋中に漂わしていた。
「先生、食べましょう!! 今用意します。」
玄関に下ろしていったラーメンを、Mr.Gのテーブルに運んだ。
私も料理を自分の机において、蓋代わりにしてあるサランラップを剥いだ。
Mr.Gはそのまま動こうとしない・・・・・
私の机には、オーディオほか全てのコントローラーが用意されている。
かけたCDは、「Oh Happy Day」特に無理をして選んだ訳ではないが、私が聞くと元気の出る曲だった。
神の声が聞えるかもしれないと、時々思えるからなんだけど・・・
私のれんげがご飯をかき混ぜだしたころに、Mr.Gもラーメンをすすり始めた。
よくよく考えると、中華料理にゴスペルって どう考えてもいい組み合わせとは思えなかったが なんとなくこれはこれでいいかなと思ってしまった。
以外に、そう 出前の料理のレベルではない 美味しい!!
お腹が満ち足りてくると幸せになって、顔がほころんでくる。自分の単純な性格が嫌になってしまう。
昨日から、気がちょっと浮いていたので実は食欲が無かった。何も解決していなかったんだけど 少し解決の糸口が見えて なんとなく安心したらおなかが空いて一気に食べてしまった。
Mr.Gはやはり食が進まないようであった。
取り合えず、何であるかはわからないが台所には 多くのお茶の葉が揃えられていた。
いいものか悪いものか、ウーロン茶もあったのでそれを入れた。何の関係も無いが中国だからそうじゃあいかといった単純なものだった。
流石に効果があるのか、お茶を飲んだとたんに また、お腹がすいてきた